オトナの教養 週末の一冊

2013年10月24日

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 茨城県土浦市で有機農業を営む久松達央さんの初めての著書、『キレイゴトぬきの農業論』(新潮新書)の売れ行きが好調だ。この本では農業にまつわるさまざまな“神話”について、あるいは農薬や有機農業へのありがちな誤解についてひとつひとつ検証されているだけではなく、「センスもガッツもない」と自認する久松さんが体験してきた試行錯誤も率直に綴られている。その語り口は業種を問わず、すべての「働く人」へのエールにも感じられる。

 とはいえ、「有機はおいしい」「有機は安全」という有利なイメージを、ほかならぬ有機農家自らが解きほぐそうとするのはなぜなのか。「日本一話のうまい農家」と呼ばれる久松さんの目指す農業とは、いったいどのようなものなのだろうか。

――7月末に掲載した千葉県柏市の農家、小川幸夫さんとの対談記事(「それでも有機野菜を作る理由」)では開口一番、「生産者と消費者のディスコミュニケーション解消には興味がない」とおっしゃっていました。しかしこの本では、まずそのディスコミュニケーションやよくある誤解について、とても丁寧に答えられていますね。

『キレイゴトぬきの農業論』
(久松達央、新潮社)

久松:就農希望者や学生を対象にした講演会などでは、ざっくりと「農業について話してください」と依頼されることが多いのですが、聴講してくれる方々の理解度がわからないので、毎回30分はこういう話にとられてしまうんです。だからネタは本に書けるだけ溜まっていました。でもこういう話はもういい、その先の話を早くしたいといつも思いながらやっていたんですね。

――そう思いながらも書かれた理由はどこにあるのでしょうか。意地悪な見方をすれば、誤解を解きほぐしても久松農園の売上には寄与しませんよね?

久松:そうですね。僕も有機農業のファンタジーにつられてこの道に入った人間なんですが、このファンタジーは何年かごとに盛り上がる。盛り上がるだけならいいのですが、専門家や業者まで「有機農業だから安全でおいしい」という魔法にかかってしまったり、それを悪用する人もいて、やっぱり看過できないという気持ちはありました。

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