それでも有機野菜をつくる理由

ぼくたちは「有機野菜」じゃなくて「おもしろい野菜」を作りたい(1)


柳瀬 徹 (やなせ・とおる)  フリーランス編集者、ライター

1972年伊豆大島生まれ。企画・編集をした本に飯田泰之・雨宮処凛『脱貧困の経済学』、五野井郁夫『「デモ」とは何か―変貌する直接民主主義』、若田部昌澄『もうダマされないための経済学講義』、五十嵐泰正・他『みんなで決めた「安心」のかたち―ポスト3.11の「地産地消」をさがした柏の一年』、片岡剛士『アベノミクスのゆくえ』など。

有機農家対談 「ぼくたちの農業」

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茨城県土浦市と千葉県柏市――どちらも福島第一原発事故の影響により空間線量が上昇し、農業生産が打撃を受けた土地だ。消費者の「安全・安心」意識と厳しく向き合うことを強いられた生産者たちがそこにはいる。

 土浦市で有機農園を営む久松達央さんは、新規就農希望者への講演活動やメディアでの発言も旺盛な、若手有機農家のリーダー的存在だ。

 また小川幸夫さんは、ホットスポット報道が加熱するなか柏市で発足した消費者や農家などの協働による「『安全・安心の柏産柏消』円卓会議」に参加し、やはり若手農家たちの精神的支柱となった(円卓会議の1年半の活動は、五十嵐泰正他編『みんなで決めた「安心」のかたち――ポスト3.11の「地産地消」をさがした柏の一年』 亜紀書房 に収められている。参照記事:「放射能問題 柏が『みんなで決めた』基準値 多様な利害を調整する運動」)。

 久松さんは無農薬の有機農家であり、小川さんも父親が作付けしている一部の作物以外は有機無農薬栽培を行っている。二人とも少量多品目の野菜を栽培し、JAを通さずに個人や飲食店、契約スーパーなどに直接販売を行う専業農家でもある。

左・小川幸夫さん 右・久松達央さん

 さきごろ映画化もされた『奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録』(石川拓治著 幻冬舎文庫)がベストセラーになったことで、有機栽培についての議論が巻き起こっている。さまざまな困難を乗り越えて「無肥料・無農薬栽培のリンゴ」を実現させたという木村氏は、慣行栽培のみならず、一般に流通している有機栽培のリンゴにも厳しい批判を浴びせている。それに対し「木村さんの栽培方法はごく限られた生育条件での成功例にすぎない」「木酢液(炭焼きの副産物などとして生成される弱酸性の液体)を使用しているが、それはかつては農薬として登録されていた“失効農薬”であり、無農薬栽培とはいえない」などといった反論が、農業関係者から起こったのだ。

 これは、これまでも何度か繰り返されてきた“有機論争”の再来といえるだろう。しかし、二人は「有機栽培か慣行栽培か、という議論には興味がない」と口を揃える。それはなぜなのか――。

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「有機農家対談 「ぼくたちの農業」」

著者

柳瀬 徹(やなせ・とおる)

フリーランス編集者、ライター

1972年伊豆大島生まれ。企画・編集をした本に飯田泰之・雨宮処凛『脱貧困の経済学』、五野井郁夫『「デモ」とは何か―変貌する直接民主主義』、若田部昌澄『もうダマされないための経済学講義』、五十嵐泰正・他『みんなで決めた「安心」のかたち―ポスト3.11の「地産地消」をさがした柏の一年』、片岡剛士『アベノミクスのゆくえ』など。

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