米中サイバー戦
目的異なる“非対称戦”

日本に欠ける外交・安全保障の視点


小原凡司 (おはら・ぼんじ)  東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’sを経て、13年1月より現職。

チャイナ・ウォッチャーの視点

めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリストや研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。(画像:Thinkstock)

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2013年9月17日、米国セキュリティーソフト企業であるSymantecが発表した報告書“Security Response”は、中国を拠点とする高い技術を持ったハッカー集団の存在を指摘した。当該ハッカー集団は、インターネット検索のグーグル及び米軍需産業のロッキード・マーチンにも侵入したという。同じく2013年2月19日に米国情報セキュリティー企業Mandiantが発表した報告書“APT1 - Exposing One of China’s Cyber Espionage Units”は、中国人民解放軍総参謀部第三部二局に所属する上海所在の61398部隊の概要、対米サイバー攻撃への関与及びその方法を詳細に述べている。

 中国によるサイバー攻撃は、米国で深刻な問題になっているのだ。6月7日の米中首脳会談においても、バラク・オバマ大統領は、習近平主席に対して、米国に対するサイバー攻撃に中国政府が関与していると非難している。これに対して、習主席は、中国もサイバー攻撃の被害者であり、サイバー・セキュリティーの分野においては米中が協力すべきだと主張する。米中の主張は真っ向から対立している。

今年6月の米中首脳会談でも、サイバー問題が話題に
(写真:Photoshot/アフロ)

サイバー攻撃で物理的破壊も可能

 そもそもサイバー戦とは、どのような戦闘様相を見せるのだろうか?

 実は、サイバー空間を用いて出来ることは非常に多い。日本ではあまり意識されていないが、サイバー攻撃によって物理的破壊をもたらすことも出来る。例えば、2010年11月にイランのウラン濃縮施設を機能不全に追い込んだのは、米国及びイスラエルが共同開発したとされる「Stuxnet」というマルウェアである。このマルウェアは、遠心分離機の回転速度を制御するプログラムに影響を及ぼしたのだ。これにより、イランの核開発は数年遅れたと言われる。

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著者

小原凡司(おはら・ぼんじ)

東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’sを経て、13年1月より現職。

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