オトナの教養 週末の一冊

2013年12月6日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

 昨年、アメリカ・ハーバード大学のアルビン・ロス教授(現、スタンフォード大学教授)と、アメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のロイド・シャプリー名誉教授の2人が、「マーケットデザイン」の貢献によりノーベル経済学賞を受賞した。耳馴染みのないこの「マーケットデザイン」とは何なのか。一般向けに平易に解説された『マーケットデザイン ――最先端の実用的な経済学』(ちくま新書)が出版されたと聞き、著者で慶應義塾大学経済学部准教授の坂井豊貴氏に話を聞いた。

――「マーケットデザイン」とは耳慣れない言葉ですが、どんな学問分野でしょうか? 

坂井豊貴氏(以下坂井氏):私はよく「経済学的ものづくり」というフレーズを使います。一般に「ものづくり」という言葉から多くの人が想像するのは、工場や職人など物理的にモノを生産することだと思います。しかしものづくりの発想は社会的な仕組みを作るときにもきわめて重要です。

 まず、優れたモノがあっても、それが活用できる人の手に渡らなかったら価値は生まれません。モノが優れていることと、持つべき人が持っている、つまり適切に配分されていることは大きく異なります。この区別が大切です。

 例えばフェラーリやロールズロイスは美しい車ですが、私は免許を持っていないのでそれらを運転できません。ガレージに置いてうっとり眺めるくらいはできるでしょうが、宝の持ち腐れですよね。坂井に高級車を持たせるような社会制度があったとしたら、その制度は相当性能が悪いわけです。

――モノが優れていることと、その配分が優れていることは、全く別の概念だということですね。

坂井氏:その通りです。マーケットデザインは優れた配分が実現するように社会制度を作っていこうとする学問分野です。だから「経済学的ものづくり」というわけです。制度設計自体は、社会科学全般で論じられていますが、マーケットデザインの場合は市場あるいは市場的な制度を作るというのが特徴でしょうか。

 いわゆる教科書的な経済学だと、市場はブラックボックスのように扱われることが多いです。アダム・スミスの「見えざる手」という表現が典型ですよね。しかし市場を性能よく作るためには中身を可視化して、内部の働きを見渡す必要があります。人々がどう動いて価格がどう変わるか、帰結はどのようになるか、ゲーム理論を用いて推測するのが高質な市場の設計には不可欠です。

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