オトナの教養 週末の一冊

2013年10月25日

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 この夏、大学の公開講座で彫刻のコースをとった。二次元の表現方法に物足りなさを感じ、三次元で「かたち」を創造してみたかったからだ。

 生まれて初めての裸婦像。思った通りになどいくはずもなく、ひたすら人体という構造物の美しさに驚愕するばかりだった。自然の創造した「かたち」に魅了され、そのいくばくかでも再現したいと試みてきたのが、芸術や建築という人類の営みであったと、改めて感じた。

『かたち: 自然が創り出す美しいパターン』
(フィリップ・ボール 著、林 大 翻訳、早川書房)

 その意味で、本書の帯にある宣伝文句--「アール・ヌーヴォー様式を取り入れたような優雅なクラゲや、金平糖でフラクタル図形を作ったらこうなるに違いないブロッコリー、そして名工のタペストリーにも見まがう、大腸菌が作る模様……自然は芸術家の手になるとしか思えない、美しく手の込んだ「かたち」にあふれている」--は、逆さまであると思う。

 アール・ヌーヴォー様式も名工のタペストリーも、自然の美に近づきたいわれわれの、精一杯の模倣である。自然そのものは、自然の法則にのっとって、ひとりでにタペストリーを織り成しているのであって、そこに意志はない。自然の創り出すパターンに、われわれの意識(と、おそらく無意識)が美を感じとり、陶酔しているのである。

 それでは、目を見張るような自然の造形は、どんな数理法則あるいはルールで生成されるのか。訳者の言葉を借りれば、「自然のパターンの秩序と規則性はどのようにして現れるのか。どのようにして混沌から秩序が現れるのか」。

 自然界に見られるかたちとパターンについて、さまざまな分野の研究成果を紹介しつつ、その謎に挑んだのが、本書である。

サファリを走り回る獣たちの模様と
「テューリング・パターン」

 まず目を引くのは、冒頭を飾るカラー口絵。培養皿で育てられた大腸菌のコロニーに現れた山形模様は、花笠のようにきらびやかである。このパターン形成は、栄養分の不足といった不利な環境条件における集団的反応で、大腸菌は化学的な信号と運動(化学走性)によってこのように集合するという。

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