2024年5月5日(日)

BBC News

2024年4月25日

アメリカの大学で、パレスチナ自治区ガザ地区での戦争に抗議する行動が広がる中、連邦議会のマイク・ジョンソン下院議長(共和党)は24日、ニューヨーク市のコロンビア大学を訪問した。同大学は抗議で緊迫しており、ジョンソン氏はやじを浴びせられた。

ジョンソン下院議長は、コロンビア大学の関係者が現状をコントロールできなくなっていると述べた。

そして、ネマト・シャフィク学長に辞任するよう求めた。

ガザ地区での戦争をめぐる抗議行動は、アメリカ各地で起きている。テキサス州とカリフォルニア州では警察がキャンパス内で抗議者と対立し、数十人の逮捕者が出た。

コロンビア大学でも、パレスチナを支持する抗議者たちが、抗議行動に対する警察の行動をめぐりシャフィク学長の辞任を求めた。

ジョンソン下院議長はこの日、同学長と短く面会した後、ほかの共和党議員とともに大学内で記者会見を開いた。

その中で、抗議行動は法的に保護された言論の自由にあたるとの指摘を一蹴した。ジョンソン氏は大学側がキャンパス内の秩序回復のための行動をとらず、キャンパス内やその周辺で反ユダヤ主義行動が疑われているにもかかわらず、大学はユダヤ人学生の保護を怠ったと指摘した。

「これは危険だ」とジョンソン氏は述べた。「我々は言論の自由を尊重し、考え方の多様性を尊重する。しかし尊重するには、それを合法的に行う方法がある。今起きていることはそういう(合法な)ものではない」。

「野営地に留まる学生たちに、私からメッセージがある。授業に戻り、ナンセンスなことはやめなさい」

ジョンソン氏が立つ演壇からほど近い場所にある、金属製の障壁の陰に隠れていた抗議者もいた。彼らはジョンソン氏の発言中、「聞こえないぞ」などと叫んだりやじを浴びせた。

ジョンソン氏はまた、州兵招集の可能性をあげた。ただ、ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事(民主党)は招集の予定はないとしている。

抗議の野営

コロンビア大の学生たちは1週間前にキャンパス内の芝生の上に、抗議の野営地を設置した。

18日には、大学側の要請を受けたニューヨーク市警が学生ら100人以上を逮捕した。

抗議者たちはその後、追加のテントやプラカードを持って同じ場所に戻った。

大学関係者は現在、野営地の規模をめぐり抗議行動のリーダーたちと交渉中で、話し合いは25日まで続く見込み。

学生たちは安全上の懸念から、オンライン授業の受講が選べるようになっている。

同大のペイジ・フォートナ政治学教授は、学生が持っていたイスラエル国旗が取り上げられたり、「極めて問題のある」発言がなされるなど、抗議行動の最中に「非常に不愉快な」出来事を数多く目撃したとBBCに語った。

一方で、キャンパス内でユダヤ人学生に対する身体的暴力行為は見たことがないとし、反ユダヤ主義がまん延しているとするジョンソン氏ら共和党議員の主張は「誇張されたもの」だとした。「校門の外で交わされている会話のトーンと、実際にキャンパスで起きていることは、本当に違う」と、フォルトナ教授は述べた。

今週行われたインタビューで、一部の抗議者たちはユダヤ人学生に対して嫌がらせが起きるのはまれだとし、自分たちの要求に反対する人たちが大げさに言っているだけだと主張した。

ニューヨーク市警や大学関係者も、「外部の扇動者」が抗議行動をあおったとしている。

キャンパスの外では24日、顔を覆った人物が街頭に立ち、反ユダヤ主義的な中傷をしたり、学生を罵るなどした。抗議の野営を支持する人たちがこれにすぐさま反応し、抗議者たちの努力を「安っぽく」みせるようなまねはするなと批判した。「こういう行動は、(反ガザ戦争)運動にとって本当に有害だ」と、抗議者を支援するためニューヨークに来たというメリーランド州ボルティモア在住のキャロライン・デイジー氏は述べた。

「これは反ユダヤ主義的な運動ではない。けれども、外部の人間による抗議は場合によって、別の話だ」

ユダヤ人学生が懸念

何人かのユダヤ人学生はこの日、キャンパスで身の安全に不安を感じていると話した。

イスラエル出身のコロンビア大の学生で、かつてイスラエル国防軍(IDF)に所属していたというガイ・セラ氏は、抗議行動が始まって以降、大学にいる「イスラエル出身のユダヤ系学生は全員」が言葉による、あるいは身体的な「反ユダヤ主義的行為に少なくとも1度は」直面していると思うと、BBCに語った。

「私はイスラエルで生まれたというだけで、ここで脅迫されたり、殺人者だとか虐殺者だとか強姦魔だとか呼ばれている」

ニュージャージー州出身で、修士課程で学ぶジョナサン・スウィル氏は、コロンビア大学の博士課程への進学を断り、卒業後はイスラエルに移住するとBBCに語った。「もうここにはいられない」とスウィル氏は述べた。「自分にとって、ここは居心地の悪い場所だ。目が覚めるたびに、キャンパスに来るのがいやでたまらないと思ってしまう。いつ物を投げつけられるかわからない」。

全米の大学に拡大

コロンビア大学の野営地で18日に逮捕者が出た後、ガザ戦争に抗議する動きが全米に広がった。

テキサス州オースティンにあるテキサス大学では、警察が抗議者を押し戻した。グレッグ・アボット州知事は24日午後、「今まさに逮捕が行われている。この群衆が消えるまで続く」とソーシャルメディアに投稿した。

地元当局によると、約20人が逮捕された。

カルフォルニア州ロサンゼルスのカリフォルニア大学でも、警察と抗議者が対立する事態となった。学長室の声明によると、破壊行為と対立を受け、キャンパスへの入構が制限された。

オハイオ州立大学(オハイオ州コロンバス)では学生2人が逮捕された。

ハーヴァード大学(マサチューセッツ州)では24日午後に抗議者たちがキャンパス内にテントを張った。同州ボストン周辺にあるマサチューセッツ工科大学(MIT)やタフツ大学、エマーソン大学でも、野営地が設置されたと報じられた。

カリフォルニア大学バークリー校では、反戦や言論の自由を求める抗議行動が定期的に行われているスプロール・プラザにテントが張られた。学校当局は、大学運営の妨げにならない限り容認する意向を示した。

ほかにもフロリダ州やミシガン州など、多数の大学で同様の動きが報告されている。

抗議者たちは大学側に「ジェノサイド(集団虐殺)から資金を引き揚げ」るよう求め、武器製造企業や、イスラエルによるガザ攻撃を支援するその他の産業に、大学基金を投資し、運用するのをやめるよう求めている。

イスラエル政府は、自分たちがガザ地区でジェノサイドを行っているという非難を強く否定している。しかし、国際司法裁判所は今年1月、イスラエルがジェノサイドを行っているという訴えは「蓋然性のある」もっともなものだと述べている。

ガザでの戦争は昨年10月7日、イスラム組織ハマスがイスラエル南部に奇襲攻撃を仕掛けたことで始まった。ハマスはこの攻撃で、民間人を中心に約1200人を殺害し、237人を人質にしてガザへ連行した。

ハマスが運営する保健省によると、イスラエル軍によるその後のガザ攻撃で、3万4180人以上が殺害され、そのほとんどが子供や女性だという。

(英語記事 House speaker Mike Johnson heckled by protesters in tense campus visit

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c72p6zzdk1go


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