2024年5月6日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年4月26日

 フィナンシャルタイムズ紙コラムニストのデビッド・ピリングが、3月12日付け同紙掲載の論説‘The bullish case for South Africa’で、長年の悪いニュースの後、南アは短期・中期的には楽観できる理由もあると述べている。主要点は次の通り。

(Torsten Asmus/gettyimages)

 ここ数年、南アからのニュースは停電、慢性失業、国家汚職、犯罪、哀れな経済成長、ランド(通貨)の下落という悪いものばかりがここ数年続いてきた。更に、5月予定の選挙でアフリカ民族会議(ANC)の得票が50%を切る可能性があるとの見方が加わり、選挙後の政治的不安定につき様々な憶測が出ている。

 しかし、短・中期的には注目すべき話がある。最初の良いニュースは、経済・産業の足枷となってきた電力危機が改善され始めたことだ。

 2022年、ラマポーサ(大統領)は、再生可能エネルギーへの転換に反対する石炭ロビーや民間を信用しないANCの双方と話をつけ、民間発電業者に対する発電量制限を一挙に撤廃した。その結果、約10ギガワットの安価な太陽光、風力発電が徐々に導入されることになった。これにより、民間企業からの国家電力公社(Eskom)への需要が軽減され、配電網への電力供給が増加する。

 同じことは、運輸・物流部門にも見られる。鉄道・港湾公社トランスネットも、エスコムと同様深刻な危機にあった。送電線や線路の盗難が横行、貨物の輸送ができなかった。

 アフリカ最大の港ダーバン等も同様だった。23年11月には、約7万個のコンテナを積んだ79隻が海岸沿いで貨物処理の順番を待っていた。23年、輸送遅延のため南アの石炭輸出量は1993年以来最低の5000万トンに低下した。これも最悪の事態は過ぎるかもしれない。今月、トランスネットは遂に新最高経営責任者(CEO)にフィリップスを、エスコムもCEOにマラコネを任命した。

 重要なことに、トランスネットも民間企業に目を向けている。フィリピン企業の国際コンテナ・ターミナル・サービスは、労働組合との雇用保全合意に達し、ダーバン港を運営することになった。政府は、民間企業による自社リースの機関車をトランスネットの鉄道で運行することを認めようと検討している。


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