2024年5月7日(火)

BBC News

2024年4月26日

ハイチのアリエル・アンリ首相が25日、辞任した。武装ギャングの暴力行為によって治安が崩壊している同国は今後、政権移行評議会が統治する。

アンリ氏は今年1月、国内の暴力に対処するための国際治安部隊の派遣についてアフリカのケニアなどを訪問して協議。しかしその後、アンリ氏の退任を求めていたギャングに帰国を阻まれたため、今年3月に辞任に同意した。

この日の辞任はアメリカ・ロサンゼルスで署名された24日付の書簡で公表された。

25日には政権移行の式典が開かれたが、最近発生した暴力事件により、当局は会場を移転せざるを得なかった。

ギャングは現在、首都ポルトープランスの大部分を支配している。また、首相退陣によって空いた権力の空白を利用し、事実上無法地帯と化した国土の大部分を支配している。

式典では、政権移行に携わる評議員9人が宣誓を行った。うち7人が投票権を持つ。アンリ政権で財務相を務めていたミシェル・パトリック・ボワヴェール氏が暫定首相となった。

ボワヴェール氏は、政治的危機を克服するための解決策を模索する中で、ハイチは「岐路」に立たされていると発言。国民や建物、インフラなどが被害を受けていると語った。

評議会は秩序と民主的な統治の回復を目標としており、他のカリブ海諸国とアメリカの支援を受けている。新内閣の議題を設定し、国家安全保障評議会を設立し、選挙への道を開くために選挙管理委員会を任命する。評議会の任期は新大統領の就任が予定されている2026年2月7日とされている。

米ホワイトハウスは「自由で公正な選挙に向けた重要な一歩」とし、評議会の宣誓を歓迎した。

しかし、25日の式典そのものも、ハイチを席巻しているギャングの暴力に巻き込まれた。

式典が行われる予定だったナショナル・パレス付近で銃声が聞こえたため、当局は首相官邸に会場を変更せざるを得なくなった。

以前、宮殿を攻撃したギャングたちは、式典を失敗させると誓っていた。24日には、警察が催涙ガスを使って近くの通りで群衆を解散させた。

有力なギャングのリーダーで「バーベキュー」のあだ名があるジミー・シェリジエ氏は、ソーシャルメディアで脅迫の動画を公開。「(評議会が)設置されるかどうかにかかわらず、これはお前へのメッセージだ。覚悟しろ」と述べた。

シェリジエ氏は現在、複数のギャングが連帯する「ヴィヴ・アンサム(共に生きるの意味)」の有力者となっており、ポルトープランスの8割を掌握している。

同氏は3月、ギャングを新政府樹立のための協議に参加させれば、武器を捨てることも検討すると述べていた。

また、ハイチにおける暴力の急増を「誇りに思わない」と述べ、「腐敗した政治家」を非難する自分たちのようなグループが将来の政府の一部にならなければ、危機は続くと警告した。

国連は3月に発表した報告書で、ハイチの状況は「大惨事」だと説明。2024年の最初の3カ月間で1500人以上が死亡し、800人が負傷したとした。

また、ギャングの「悲惨な慣行」について詳述した。ギャングは極度の暴力と性的虐待を罰と支配の手段として用いていると非難されている

一方、支援団体は、ポルトープランスへの食料と水の供給が困難だと指摘。何百万人もが飢饉(ききん)の危機にひんしていると警告している。

ハイチはカリブ海の国家で、ドミニカ共和国と国境を接する。推定人口は1150万人。国土の面積は2万7800万平方キロと、ベルギーより一回り小さい。

ここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、ハイチはアメリカ大陸で最も貧しい国となっている。

2010年の地震では20万人以上が死亡し、インフラや経済に甚大な被害をもたらした。

2004年にハイチ安定化のために国連平和維持軍が派遣されたが、2017年に撤退している。

2021年7月、モイーズ大統領がポルトープランスで正体不明の武装集団に暗殺された。

アンリ氏は当初、後任が決まるまでハイチを率いる予定だったが、治安の回復が第一だとして、繰り返し選挙を延期してきた。多くのハイチ国民は、選挙によって選ばれていないアンリ氏の統治の長さに疑問を抱いていた。

(英語記事 Haiti PM Ariel Henry resigns as transitional council is sworn in

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c043p7mk03eo


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