うつ病蔓延時代への処方箋

2014年2月12日

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 うつ病を始めとする精神疾患の要因は多様だと思います。一般的には急速な経済発展の歪ととらえることができるでしょう。人件費は高くなり収入は増えていますが、製造業で1日平均10.5時間、土日も休まずに働いて得る収入です。しかし、物価も上昇しており、働いても安定感を得ることができない。やはり仕事への負担感が大きく、イライラ感を募らせてしまう。

 さらに言えるのは、精神疾患に対する中国での捉え方に問題があると思います。日本でも同じ傾向はみられますが、精神的な病にかかる者は“愚か者”というレッテルを貼られてしまいます。非常に恥ずべき病であるという社会的評価が、他人の力に頼る考えを止め1人で悩む状況を作ってしまう。だから、うつ症状で気分が優れなくても誰にも相談しない。こうして徐々に悪化させ重症化してしまう。

 日本では、うつ病が広く知られるようになりました。正しい認識があるのかどうかは別にしても社会で受け入れていかなければならないという考え方があります。その点で中国では、大半の国民がうつ病を知りません。精神疾患に対して悪いイメージしかもっていません。

精神科医を目指す医学生が少ない

―― 中国政府はどのような対策を講じているのですか。

張:習近平体制になってから、力を入れ始めています。2013年5月に「精神衛生法」が施行されました。ここには、メンタルヘルスの推進と予防が条文に書かれており、患者への差別の禁止、強制的な入院措置などもあります。この考え方の基本は、精神疾患を抱える人が増え、同時に自殺者も増大している状況は、社会的不安を招くことにつながる。だから、心の健康を重視し社会の安定化を図るのが狙いです。病院は精神疾患の患者に対応する義務が生じたともいえます。見方を変えると重度な精神障がい者は、公安と協力して強制入院させるということです。いずれ企業にもメンタルヘルスの義務が課せられるとみています。

―― 医療体制、とくに精神科の医師が少ないと聞いていますが。

張:全国で登録されている精神科の医師は2万人弱、国民10万人あたりの精神科医師数は1.46人で、国際基準の4分の1にとどまっているというデータがあります。このように現状の中国では精神疾患医療サービスが著しく不足しています。ただ実際にはもっと少なく、精神科医は5,000人規模ではないでしょうか。このうち、西洋医学的な治療ができる医師、つまり抗うつ剤などを処方できるのは2,000人程度だと思います。もちろん、抗うつ剤を出せる医師がいることが、いいという話ではありません。

 その多くは沿岸部の大都市に集中しており、農村部に行けば精神科医は、ほとんどいないはずです。聞いたことがない。2011年10月の「人民網日本語版」では、北京市衛生局長の話を伝えています。それは、北京市の精神科医は1,000人にも満たない状態で、その原因として精神科医の道に進もうとする医学生が少なく、精神科医に対する偏見、他の診療科の医師と比べて収入が低い、ことなどを理由としてあげています。

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