チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年2月17日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’sを経て、13年1月より現職。

 米国ニュースサイトのワシントン・フリービーコンが1月13日、米国務省当局者からの情報として報じたところによると、1月9日、中国の極超音速滑空実験機(hypersonic glide vehicle)「WU-14」が大陸間弾道ミサイルの弾頭に搭載されて発射され、その後、滑空してニア・スペース(準宇宙)をマッハ10で機動したという。

 これに対して、中国国防部は15日、核弾頭の搭載が可能な極超音速滑空ミサイルの試射を行ったことを明らかにした。同時に、これは科学的な試験であり、いかなる国を狙ったものでもないという説明を加えている。

 なぜ「極超音速飛翔体」の試験が、米国メディアの関心を引いたのか。そして、なぜ中国国防部は、わざわざ「いかなる国を狙ったものでもない」と付け加えなければならなかったのか。それは、極超音速飛翔体が、国際社会の安全保障環境をさらに複雑にする戦略兵器となる可能性があるからだ。

核に代わる抑止力に?

 極超音速飛翔体は、他国に対して抑止効果を有する。「核なき世界」構想を進めるオバマ政権にとっては、核廃絶の切り札とも言われている。だからこそ、米国は極超音速飛翔体の開発を進め、実験を行ってきた。ワシントン・フリー・ビーコンによれば、飛行速度がマッハ10を超え、格弾頭が搭載可能な極超音速飛翔体の試射に成功したのは、これまで米国のみだった。ここに、中国が加わったのである。

 オバマ政権は「核なき世界」を実現するため、核軍縮の動きを活発化させているが、一方で、米国の抑止力は維持しなければならない。そこで再び注目されるようになったのが、CPGS(Conventional Prompt Global Strike:通常兵器型即時全地球攻撃)である。

 PGSは、元々、冷戦終結後に前方展開基地を削減したい米国が考え始めた構想である。前方展開基地を削減した後も、米国本土から世界中のいかなる地域に対しても、1時間以内に攻撃できるようにするというものだ。同盟国に対して米軍の支援を保証するためである。そのためには、使用のハードルが極めて高い(抑止以外に実際の使い道はない)核兵器ではなく、通常兵器を使用する必要があった。2003年、ジョージ W. ブッシュ政権下で、米国防総省は、新たな任務として、PGSを提唱している。

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