チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年11月25日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’sを経て、13年1月より現職。

 尖閣諸島問題に端を発する日中の言動は、「抑止」のつもりが、エスカレートを呼び起こす事態になってはいないだろうか。

軍事問題化しやすい領土問題

 10月18日から11月1日の間、北海、東海、南海艦隊の三艦隊すべてがそれぞれ艦隊を派出して第一列島線を越え、西太平洋で大規模演習を実施した。演習名を「機動-5号」といい、航空機も参加した。25、26、27日の3日連続で、戦闘機及び爆撃機を含む各4機編隊が第一列島線を越えて飛行したのが、日本でも報道された。

 日本では、この演習は、当該演習に先立つ10月10、11日の二日間、黄海で実施された日米韓合同演習に対抗するものではないか、或いは、11月の日本の統合演習に対抗するものではないか、といった分析も聞いた。しかし、中国で実施した研究者等に対するインタビューの内容を見る限り、中国側が言う演習の意義は全く異なる。中国は、「機動-5号」演習によって、日本政府の無人機撃墜の検討に対して中国の決意を示したと言うのだ。

 日本政府が、領空侵犯した無人機に対して撃墜を含めた強制措置を検討していることが報じられているが、中国国防省の耿雁生報道官は10月26日、同措置が中国機にとられた場合、「一種の戦争行為であり、われわれは果断な措置で反撃する」と強調した。更に「中国軍が国家の領土と主権を守る固い意志と決意を軽く見てはならない」と加えている。

 中国が、日本の無人機撃墜検討に対抗して「機動-5号」演習を実施したのだとすれば、それは、「中国軍が国家の領土と主権を守る意志と決意」を示したということだ。一方で、中国が無人機撃墜にこれほど敏感に反応したのは、日本との軍事衝突を避けたいからに他ならない。「機動-5号」演習は、軍事的な意志と能力を示すことによって、日本の軍事力行使を抑止する試みであると言える。

 翻って、日本が無人機撃墜を検討し始めたのは、中国軍の無人機が尖閣諸島周辺を飛行したからである。9月9日、防衛省が東シナ海で国籍不明の無人機が飛行しているのを確認し、写真を公表したところ、中国国防省が中国軍の所属であることを認めた。日本は、中国軍の無人機の領空侵犯を抑止するために、軍事的な意志を示したのだ。そして、この意思表示の応酬の原点は尖閣問題である。本来、外交問題であったはずの尖閣問題が、軍事問題化しているとも言える。領土問題は、本質的に軍事問題化しやすい。双方のよほどの自制がない限り、容易に軍事的エスカレーションを招く。

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