チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年11月20日

»著者プロフィール
著者
閉じる

城山英巳 (しろやま・ひでみ)

時事通信社外信部記者

1969年生まれ、慶應義塾大学文学部卒業後、時事通信社入社。社会部、外信部を経て2002年6月から07年10月まで中国総局(北京)特派員。 外信部を経て11年8月から2度目の北京特派員。11年、早稲田大学大学院修士課程修了。現地での中国取材は10年に及ぶ。16年5月に帰国し、現在外信部記者。近著に『中国 消し去られた記録〜北京特派員が見た大国の闇』(白水社)、著書に『中国臓器市場』(新潮社)、 『中国共産党「天皇工作」秘録』(文春新書、「第22回アジア・太平洋賞」特別賞受賞)、『中国人一億人電脳調査』(文春新書)がある。14年に戦後日中外交史スクープで13年度「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞。

 11月9~12日に開かれた中国共産党第18期中央委員会第3回総会(3中総会)で「国家安全委員会」の創設が決定した。習近平国家主席は、3中総会直後、国家安全委について、国営新華社通信を通じてこう説明した。

 「わが国は対外的には国家主権や安全、発展の利益を、国内的には政治・社会の安定を守るという二重の圧力に直面している。国家安全工作の集中的かつ統一した指導を強化することは、当面の急務となっている」

 国家安全委創設に関して、「国家主権」の維持を挙げたのは、沖縄県・尖閣諸島をめぐり対立する日本を念頭に置いたものであるのは間違いない。しかし複数の中国政府筋によると習を筆頭に最高指導部・政治局常務委員7人全員が顔をそろえ、周辺外交に関して初めて開いた10月下旬の重要会議「周辺外交工作座談会」で、習近平は対日関係の議論に長時間割き、「今の状態が続くことは双方にとって不利益だ」と強調。その上で「経済のほか、民間の文化・人的交流などを拡大させなければならない」と関係改善を指示した。

 15日で習近平の総書記就任からちょうど1年。習は、尖閣対立で漂流する日本との関係を微妙に転換させたもようだが、尖閣問題が壁となり予断を許さない状況は当分続きそうだ。

3中総会開幕日に陳情者1000人が抗議

 国家安全委設立に関する構想が出るのは今回が初めてではない。1990年代後半に江沢民国家主席(当時)は、米国の国家安全保障会議(NSC)をモデルに、外交・安全保障の司令塔を構築しようとしたが、既に党・政府・軍のトップにあった江沢民が国家安全委を統括すると、絶大な権限を持つことになることへの懸念が強かったほか、当時はさほど緊急性もなかった。

 しかし今は確実にその緊急性が高まっている、というのが習近平の考えである。習は新華社を通じてこうも語っている。

 「国家の安全と社会の安定は、改革・発展を実現する前提であり、国家・社会の安定があってこそ、改革と発展は絶えず推進する。(中国では)予見可能あるいは予見困難なさまざまなリスク要因が明らかに増えているが、われわれの安全対応メカニズムではもはや国家安全の必要性に適応できなくなっている」

 北京・天安門での突入・炎上や山西省共産党委員会前での連続爆発という不穏な事件が相次いだほか、全国各地で発生する抗議活動や暴動は年間18万件以上に達している。さらに3中総会開幕日の11月9日午前、腐敗を取り締まる監察省の前には、幹部の腐敗などに抗議する1000人以上の陳情者が集結した。同総会を控え、北京市内に大量の警察を配置して陳情者を次々と拘束する中での異例の「集結」に指導部が衝撃を受けたのは容易に想像できる。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る