チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年7月17日

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城山英巳 (しろやま・ひでみ)

時事通信社外信部記者

1969年生まれ、慶應義塾大学文学部卒業後、時事通信社入社。社会部、外信部を経て2002年6月から07年10月まで中国総局(北京)特派員。 外信部を経て11年8月から2度目の北京特派員。11年、早稲田大学大学院修士課程修了。現地での中国取材は10年に及ぶ。16年5月に帰国し、現在外信部記者。近著に『中国 消し去られた記録〜北京特派員が見た大国の闇』(白水社)、著書に『中国臓器市場』(新潮社)、 『中国共産党「天皇工作」秘録』(文春新書、「第22回アジア・太平洋賞」特別賞受賞)、『中国人一億人電脳調査』(文春新書)がある。14年に戦後日中外交史スクープで13年度「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞。

 「いかなる接触も前向きな効果があるか事前に考える必要がある。実際の効果を必ず考えなければならない」—。

 ボルネオ島の北側に位置する王国・ブルネイで6月29日~7月2日まで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)をめぐる一連の会議で、中国の外相・王毅は日本人記者団に何回かこう語った。岸田文雄外相との接触の可能性を聞かれての答えだった。

 結論から言うと、両外相は接触どころか、挨拶もしなかった。安倍晋三首相はそれに先立つ6月28日夜、「尖閣の問題で一定の条件を日本がのまなければ首脳会談をしないと(中国側は)言ってきている」と反発したが、中国政府は尖閣諸島をめぐる領土問題の存在や領有権「棚上げ」を認めない日本政府に対し、これらの柔軟化を首脳会談の条件としていたのだ。

「外相会談」準備を進めた外交当局

 王毅はブルネイ出発前、ある日本の要人と会談し、こう語ったという。「もう日本側では会談はないことになっているようだから」。日本メディアは、日本側がブルネイで王毅と非公式な立ち話を行う調整を進めると報じていた。こうした報道を知っていた王は立ち話について「現場で判断します」と答えた。

 筆者はブルネイで取材していて、日中政府ともに、「立ち話」に備えた準備を進めていたのは分かった。日本の外務省の中国担当課長と中国語通訳も来ていたし、中国外務省の日本担当者も同行していた。王毅もブルネイで日本人記者に「日本側が会いたいことは知っている」と話し、冒頭の「(接触した)効果を考える必要がある」との発言と共に、日本政府にも伝わっていた。

 しかし結局、日中外相は会話を交わさなかった。岸田は日本人記者団に「結果として今回は、接触はなかった。しかし、大切な二国間関係、ぜひ進めるべく関係者は努力しなければいけない、それは当然のことです」と述べた。

「安倍発言」に反応した中国政府

 中国政府筋によると、王は最初から岸田と接触しないと決めていたわけではない。王に随行した羅照輝アジア局長も会議中、「看情況」(状況を見て)と繰り返した。しかし中国側を硬化させた原因の一つは、首相・安倍晋三の前出・日中首脳会談をめぐる発言だったようだ。

 28日に続き、30日にも「(2国間に)課題があるのであれば、会って話をすることが正しい外交の在り方だろう。会う、会わないをお互いに条件にすべきではないだろう」と中国政府の対応を批判した。

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