日本政府による沖縄県・尖閣諸島(中国・釣魚島)の国有化で、日中関係の極度の緊張が続く9月27日夕。共産党序列第4位の政治局常務委員・賈慶林中国全国政治協商会議(政協)主席が北京の人民大会堂で、日中友好団体会長ら12人との会談に応じた。会談終了後、日中友好7団体の会長の一人はこうつぶやいた。
「日中関係のステージが上がったな」
つまり日本政府が尖閣問題で一定の譲歩を示さない限り、国有化以前の日中関係に戻らない、という意味だ。
「日中関係は1972年の国交正常化以降、最も深刻な状況になっている。もしかしたら戦後以降でも最も関係が悪化しているかもしれない」(日中外交史研究者)。日中両国はどこでボタンを掛け間違えたのか、舞台裏を検証したい。
「親中派」12人との緊張感に満ちた会談
賈慶林と日本側友好団体会長らとの70分間の会談は「緊張感に満ちた」(河野洋平前衆院議長)ものだったという。会談終了後、中日友好協会の唐家璇前国務委員は、以下の12人を釣魚台迎賓館での夕食会に招待した。
河野前議長(日本国際貿易促進協会会長)、江田五月元参院議長(日中友好会館会長)、加藤紘一自民党元幹事長(日中友好協会会長)、高村正彦元外相(日中友好議員連盟会長)、野田毅元自治相(日中協会会長)、辻井喬(日中文化交流協会会長)、田中真紀子元外相・田中直紀前防衛相、米倉弘昌経団連会長、丹羽宇一郎駐中国大使、阿南惟茂元駐中国大使、宮本雄二前駐中国大使。
鳩山由紀夫元首相、二階俊博元経済産業相も招待されたが、特に鳩山は「出席すれば、河野氏に代わり、主賓として中国国家指導者の隣に座ることになり、自民党所属の友好団体会長がそろって鳩山氏の参加に反対した。それを知った鳩山が自ら招待を辞退した」(日中関係筋)という。
全日空機飛ばず、飛行ルートを変更
いわゆる「日中友好7団体」会長を核に、1972年の国交正常化を実現した田中角栄元首相の長女・真紀子ら「親中派」を招待したわけだが、7団体の1つである「日中経済協会」の会長・張富士夫トヨタ自動車会長は、社用機が北京に飛べずに訪中を断念した。