チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年8月30日

»著者プロフィール

 丹羽宇一郎駐中国大使の乗った公用車が8月27日、北京市北東部で男に襲われ、男は車のバンパーに立ててあった日の丸を奪って逃走した。沖縄県尖閣諸島の領有権争いをめぐる反日行動とみられる。

 終戦記念日の8月15日、香港の活動家が尖閣に上陸後、中国各地では反日デモが相次ぎ、暴徒化した群衆が日本料理店や日本車を壊したり、日の丸を燃やしたりする事件も起きた。日中国交正常化40周年(9月29日)を前にした中国での記念行事も、混乱への懸念から相次いで中止されている。

 19日には、日本の地方議員らも政府の許可を得ずに尖閣諸島の魚釣島に上陸し、中国側が反発。尖閣をめぐる日中間の対立は泥沼の様相である。この対立を沈静化させるには、どうすればよいのか、道筋を探った。

早期の国有化目指すも
交渉成立の見通し立たず

 今回の日中関係の悪化は、石原慎太郎東京都知事が4月、都による尖閣購入計画を打ち出したことが発端だ。これを受け、野田佳彦首相は7月、「平穏かつ安定的に維持管理する」として尖閣国有化の方針を示した。

 反中国的で挑発的な言辞を繰り返す石原氏の主導で都が購入するより、国有化した方が平和的、安定的に尖閣の実効支配を継続できるとの判断からだろう。

 複数の関係筋によると、政府は早期の国有化に向けて、尖閣の地権者に20億円の買い取り額を提示して、本格的な交渉を始めた。政府担当者は中国の強硬姿勢を受け、国が尖閣を管理する必要性を強調、地権者側も柔軟姿勢を示しているというが、交渉成立の見通しは立っていない。

国が主導権を握ろうとするのは当然

 中国では5年に1度の共産党大会が10月にも開かれ、習近平氏(党政治局常務委員、国家副主席)をトップとする党の新指導部が発足する。日本政府としては、中国の新指導部発足前に国有化を実現し、今回の騒ぎを収束させたい意向とみられる。

 東京都は尖閣購入に向けた現地調査のため国に上陸申請を提出したが、政府は8月27日、申請を許可しないと都知事あてに文書で回答。石原氏は「理解できない。引き続き都の立ち入りを認めるよう強く求めたい」と反発した。

 石原氏は10月に再調査を実施、その際は同行して調査を指示する意向を示した。尖閣購入をめぐって都と国の確執が続くが、都は外交、国防など領土問題を扱うための権限を持たない。国が主導権を握ろうとするのは当然のことだ。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る