チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年5月24日

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森 保裕 (もり・やすひろ)

共同通信論説委員兼編集委員

1957年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。81年共同通信入社。91~95年北京支局記者。98~2001年中国総局長、05~08年台北支局長を経て現職。

 亡命ウイグル人組織の独立運動や尖閣諸島の領有権をめぐり、中国が対日けん制を強めてきた。温家宝首相は5月に訪中した野田佳彦首相に対し、中国の「核心的利益」を尊重するよう要求し、胡錦濤国家主席は野田佳彦首相との個別会談を拒否した。中国は5月下旬に予定していた軍の制服組トップ、郭伯雄中央軍事委員会副主席の訪日も中止した。

 中国は、新疆ウイグル自治区の独立を求める亡命ウイグル人組織、世界ウイグル会議(ラビア・カーディル主席、本部ドイツ・ミュンヘン)が5月中旬、欧米以外では初めての代表大会を都内で開催したことを問題視。尖閣についても、日本が実効支配を強めていると激しく反発している。

 今年は日中国交正常化40周年だが、日中間の対立が続けば、さまざまな記念行事にも深刻な影響が出かねない。中国はなぜここまで血相を変えているのか。これまで台湾やチベットなどについて、使ってきた「核心的利益」は、尖閣諸島にも用いることを決めたのか。中国の思惑を検証した。

対日外交の大物が警告

 日中間の対立が表面化する直前の4月下旬、中国から中日友好協会の唐家璇会長が来日し、野田首相と会談した。唐氏は日本語が堪能な元外交官で、かつて駐日公使、外相、国務委員(副首相級)を務めた中国の対日外交担当の大物だ。

 唐氏は野田首相との会談後、記者団に対し「一部の問題で日中関係が損なわれることがないよう望んでいる」と強調した。会談の具体的な内容については「想像に任せる」と明らかにしなかった。

 唐氏と親しい日本の外交筋によると、唐氏は滞在中「日本政府がカーディルにビザを出せば、たいへんなことになる」としきりに警告していたという。野田首相に対しても同様の圧力を掛けたに違いない。

ウイグル大会
執拗な働き掛けの理由

 一方、中国の程永華大使は日本の国会議員全員に対し、世界ウイグル会議の大会開催に抗議し、カーディル主席ら幹部と接触しないよう求めた署名入りの書簡(5月8日付)を送った。

 書簡には「中国新疆ウイグル自治区は紀元前1世紀から中国の重要な一部」「世界ウイグル会議は中国の分裂をたくらむ反中国組織」「日本での大会会議開催は中国への内政干渉で、日本自身の安全にも害がある」などと記されていた。

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