ヒットメーカーの舞台裏

2009年5月22日

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池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

たった2秒で起動するキングジム「ポメラ」

 パソコンのようにキーボードで文字を入力する。会議や打ち合わせといった場面でのメモ専用に開発、入力した文章(テキストファイル)はUSB接続でパソコンに移すことができる。機能を絞り2万円程度の実売価格を実現、こうしたメモ機が欲しかったという潜在需要を見事に探り当てた。2008年11月に売り出し、初年度3万台の目標は4カ月でクリアしている。

 書くことを生業にする者にとって、面白い製品だ。2分割されるキーボードと4インチのモノクロ液晶部を折りたたむと文庫本サイズになる。重さは370グラムと、軽量化が進むノートパソコンの3分の1程度に抑えた。

 全角8000文字を6本保存でき、単4アルカリ乾電池2本の電源で20時間の使用に耐える。バッテリー残量が気になるノートパソコンの煩わしさを解消、起動もわずか2秒ですむ。パソコンメーカーでは恐らくできなかったであろう発想の柔軟性に満ちている。

順風満帆ではなかった、やんちゃ時代

立石幸士さん
新色「ポメラ」発表会にて

 提案から製品づくりまでを担当したのは電子文具開発部開発課リーダーの立石幸士(36歳)。大学では電機を専攻、厨房機器メーカーで制御システム開発に2年携わった後、1998年に入社した。

 ファイルおよびファイルなどに貼り付けるラベルライターを二本柱とするキングジムが、新規事業を強化するための人材募集に応募した。企画から販売プロモーションまで「一貫した製品づくりに取り組みたい」と思っていた立石には念願の職場だった。

 開発部門に配属され、ラベルライターやステッカー製作機などに取り組んだものの、今回の「ポメラ」に至るまでは決して順風満帆ではなかった。「個性を大事にしたい」と、髪形などでやや「規格」外れのサラリーマン生活を送っていた。そんな立石には冷たい視線もあり、一時は開発部門から外された時期もあった。

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