パソコンのようにキーボードで文字を入力する。会議や打ち合わせといった場面でのメモ専用に開発、入力した文章(テキストファイル)はUSB接続でパソコンに移すことができる。機能を絞り2万円程度の実売価格を実現、こうしたメモ機が欲しかったという潜在需要を見事に探り当てた。2008年11月に売り出し、初年度3万台の目標は4カ月でクリアしている。
書くことを生業にする者にとって、面白い製品だ。2分割されるキーボードと4インチのモノクロ液晶部を折りたたむと文庫本サイズになる。重さは370グラムと、軽量化が進むノートパソコンの3分の1程度に抑えた。
全角8000文字を6本保存でき、単4アルカリ乾電池2本の電源で20時間の使用に耐える。バッテリー残量が気になるノートパソコンの煩わしさを解消、起動もわずか2秒ですむ。パソコンメーカーでは恐らくできなかったであろう発想の柔軟性に満ちている。
順風満帆ではなかった、やんちゃ時代
新色「ポメラ」発表会にて
提案から製品づくりまでを担当したのは電子文具開発部開発課リーダーの立石幸士(36歳)。大学では電機を専攻、厨房機器メーカーで制御システム開発に2年携わった後、1998年に入社した。
ファイルおよびファイルなどに貼り付けるラベルライターを二本柱とするキングジムが、新規事業を強化するための人材募集に応募した。企画から販売プロモーションまで「一貫した製品づくりに取り組みたい」と思っていた立石には念願の職場だった。
開発部門に配属され、ラベルライターやステッカー製作機などに取り組んだものの、今回の「ポメラ」に至るまでは決して順風満帆ではなかった。「個性を大事にしたい」と、髪形などでやや「規格」外れのサラリーマン生活を送っていた。そんな立石には冷たい視線もあり、一時は開発部門から外された時期もあった。