『アナと雪の女王』でディズニーが見せた
「再帰的王道」

見事な「現代版」プリンセス・ストーリー


松谷創一郎 (まつたに・そういちろう)  ライター、リサーチャー

1974年生まれ。商業誌から社会学論文、企業PR誌まで幅広く執筆。国内外各種企業のマーケティングリサーチも手がける。得意分野は、カルチャー全般、流行や社会現象分析、社会調査、映画やマンガ、テレビなどコンテンツビジネスについて。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(原書房/2012年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(共著・羽渕一代編/恒星社厚生閣/2008年)、『文化社会学の視座:のめりこむメディア文化とそこにある日常の文化』(共著・南田勝也・辻泉編/ミネルヴァ書房/2008年)等。

ヒット映画を読んでみる!

写真:アフロ

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「いい映画なのにヒットしない」?

 まずはじめに、この新連載の企画意図を記しておこう。簡潔に書くと「新作映画の論評」ではあるのだが、ヒット作に限定してみよう、というものだ。

 そもそも映画評というのは、たいてい公開の直前/直後に発表される。でも、あくまでもそれは、公開前に映画を観ることができる映画評論家など“特権階級”の評価にすぎない。「いい映画なのにヒットしない」といった愚痴が評論家や製作側からしばしば漏れ聞こえてくるように、お金を払って観に行く観客はシビアに評価したりもする。

 しかし、単にそれは評論家と観客が断絶しているということでもない。イェール大学で日本映画史を教えるアーロン・ジェローは、歴史を参照したうえで日本の映画批評が「知識や実践の序列を通して自らを正当化し、そのために、とりわけ一見して(例えば、テレビの)様々な知識を必要とする世界に直面している今日の観客には、映画批評に頼る理由をアピールできなくなった」とまとめた(藤木秀朗編『観客へのアプローチ』より)。

 この連載を始めたのは、ジェローの指摘する問題意識が、私が10代の頃から素朴に感じ続けてきた疑問そのままだったからだ。評論家が高踏的に映画の善し悪しを判断しても、映画観客には響かない。それどころか映画以外のことに無知な評論家には、観客にとって当然のことが見えていなかったりもする。たとえば、若い女性文化に無知な中年の男性評論家が、ケータイ小説原作の映画を「こんな映画はけしからん!」と怒ったりとか。映画評論って、オッサンの説教なの?

 一般の観客がどんなリアリティを持つのか、あるいは映画評論家が持っていない知識を通せば映画はどのように見えるか、それが映画評論の未来を切り開くものだと私は考える。映画を良い/悪いと評価して読者をリードしたり囲い込むような映画評論など、ネット時代のいまは内輪向けの閉じた言葉でしかない。この連載ではヒット作に焦点をあて、なるべく柔らかい文体で書くことを心がける。

 というわけで、第一回目は『アナと雪の女王』だ! れりご~!

久しぶりにプリンセス・ストーリーで大ヒット

 ♪れりご~ れりご~

 いろんなところから聞こえてくる主題歌「Let It Go」が、なんとも耳に残る。『アナと雪の女王』がヒットした最大の要因は、やはりこの曲にあるのだろう。そもそもミュージカルのアニメーションなので、音楽の出来が結果を大きく左右するのは間違いない。

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「ヒット映画を読んでみる!」

著者

松谷創一郎(まつたに・そういちろう)

ライター、リサーチャー

1974年生まれ。商業誌から社会学論文、企業PR誌まで幅広く執筆。国内外各種企業のマーケティングリサーチも手がける。得意分野は、カルチャー全般、流行や社会現象分析、社会調査、映画やマンガ、テレビなどコンテンツビジネスについて。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(原書房/2012年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(共著・羽渕一代編/恒星社厚生閣/2008年)、『文化社会学の視座:のめりこむメディア文化とそこにある日常の文化』(共著・南田勝也・辻泉編/ミネルヴァ書房/2008年)等。

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