2024年11月21日(木)

科学で斬るスポーツ

2014年5月7日

 ソチ五輪フィギュアスケートで、日本人男子初めての金メダルに輝いた羽生結弦(19)。長い手足とスリムな体を使った華麗なスピン、スケーティングで観客を魅了した。一見、ひ弱に見えるが、精神力も強く、本番では4分30秒に及ぶ過酷なフリーを見事、最後まで滑りきった。この裏には、食が細く、スタミナ切れを克服するために、科学的な食事、栄養の摂取計画があった。五輪に最高のコンディショニングを持って行く、ピーキングにも成功した、羽生の取り組みを中心にアスリートたちの食事、栄養管理法を紹介する。

筋肉はたんぱく質をほしがる

実は「食事のことを考えるのが面倒くさい」タイプだったという羽生結弦選手(写真:アフロ)

 体が資本のアスリートにとって体作り、持久力の維持のために食事は極めて重要な位置を占めている。しかし、意外と食事に無頓着なアスリートが多かった。最近、それが変わろうとしている。

 現在の食環境ではバランスのとれた食事、栄養補給をするのは難しい。少し気を抜くと、三大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂肪)のうち脂肪の比重が高くなってしまうからだ。だからこそ、たんぱく質、炭水化物を努めて摂取することはとても重要になってくる。これらが不足すると、スポーツのパフォーマンスに大きく影響を及ぼしてしまう。

 血液や筋肉のもとになるたんぱく質は、体全体の20%を占めるが、その40%は筋肉に集中する。筋肉はパワー生み出す根源であり、トレーニングを通じた増強が欠かせない。その際、大量のたんぱく質が必要となる。しかし、トレーニングによって筋肉は傷ついてしまう。その修復や再生にもたんぱく質は欠かせない。

 アスリートはどのくらいたんぱく質が必要なのか。一般人と比較したデータがある。体重60kgの一般人の必要量は1日当たり60グラム。これに対し、体操、陸上短距離など、瞬間的に大きな力を出す「瞬発系種目」では120グラムと2倍の量が必要となる。サッカー、野球など「球技系種目」は105グラム、マラソンなど「持久系種目」でも90グラムを摂取しなくてはならない。意識してとらないとたんぱく質は不足してしまう。

 そのために国内では、30年近く前に、プロテイン食品(たんぱく質を多く含んだ粉末)が登場し、アスリートに推奨されてきた。しかし、水などの液体に溶かす手間や味の悪さ、食欲を減退させる量の多さなどから選手らからは不評だった。


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