中国メディアは何を報じているか

2014年6月24日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

 中国の不動産業界では低迷が続いており、日本でも中国各地で出現した「ゴーストタウン(中国語では鬼城と呼称)」について盛んに報道されるようになっている。不動産投資が過熱して価格が高騰し、マンション価格は高止まりしているが、一部価格の下落も見られ、バブル崩壊が起きるのではないかという憶測も出始めている。

不動産登記の先にある
高官の財産公開制度

 バブル崩壊への懸念が強まるなか、中国で高級不動産を巡る興味深い現象が相次いで報道されている。ここのところ売りに出される高級不動産が急増しており、それは高官たちが財産である不動産を処分し始めたためだとされる。習近平政権は、汚職取締りに力を入れており、汚職の疑いのある高官を次々に捜査、更迭しているが、根本的に腐敗の根を絶つには高官たちの財産を公開し、透明性を確保して共産党政権への支持を獲得したいところだ。

 実は現在、「不動産登記条例」の施行が模索され、既に最終草案が審査に回され、施行を待つばかりとなっているが、反発も強く、今月末と言われていた条例施行の雲行きが怪しくなりつつある。不動産登記の先にある高官の財産公開制度への反発はもっと強烈で、制度導入の如何は不透明だ。こうした状況の中で高級不動産を持つ高官の危機感が高まっており、こぞって不動産を処分しているというわけだ。

 こうした現象を理解するうえで二つの中国的な特徴を踏まえておかなければならない。一つは中国には固定資産税がないという点である。不動産を持っていても税がかからないことから、多くの人が不動産を投資対象にしており、一人で十も物件を保有するケースもある。不動産は高官の汚職と密接な関係があるのだ。過度な投機的不動産投資を抑制するためにも不動産登記の次には固定資産税を導入する必要もあろう。もう一つは、「不動産保有」というものの土地は国有で、所有権ではなく、「使用権(新築時には70年)」(通常「産権」と呼ばれている)を売買するにすぎないという点である。

 また不動産登記制度、財産公開制度、固定資産税(不動産税)という導入が検討されている一連の措置は基本的には相互に関連している問題でもある。不動産税を徴収する前提には不動産登記が不可欠であり、それを踏まえて官僚たちの財産公開を行うという一連の政策パッケージ導入が検討されているのだ。

 今回ここで紹介するのは『21世紀経済報道』ネット版の「秘密のベールに包まれた“売り手”の財産公開が不動産売却を促す?」という記事である。

* * *

【記事 2014年6月6日付『21世紀経済報道網』(抄訳)】

 5月の節句の上海市。不動産売買の「委託代理人」林晶晶女史はまたある夫妻と約束して閔行区のカフェで不動産売却価格について話し合い、委託書にサインした。この夫妻とその親戚たちの全権委託代理人として林は3戸の不動産をそれぞれ800万元から1200万元での売却を請け負った。6月3日、4日に委託手続きを行った。

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