ウクライナ・ポロシェンコ新大統領
ガス交渉決裂でも強気な姿勢


廣瀬陽子 (ひろせ・ようこ)  慶應義塾大学総合政策学部准教授

1972年東京生まれ。専門は国際政治、コーカサスを中心とした旧ソ連地域研究、紛争・平和研究。主な著作に『旧ソ連地域と紛争――石油・民族・テロをめぐる地政学』(慶應義塾大学出版会)、『強権と不安の超大国・ロシア――旧ソ連諸国から見た「光と影」』(光文社新書)、『コーカサス――国際関係の十字路』(集英社新書)【2009年アジア太平洋賞特別賞受賞】など。

解体 ロシア外交

紛争、エネルギー、政治、経済など様々な外交カードを所持し、それを絶妙なタイミングで切るロシア。日本の隣人でありながらその内側がなかなか見えない大国に、不気味な印象さえ抱く。ロシアの外交、そしてその動きの背景を、ロシアと周辺国事情に詳しい著者が読み解く。

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拙稿「混乱深まるウクライナ 」でも簡単に触れたが、ウクライナでは混乱が続く中、5月25日に大統領選挙が行なわれた。当選したポロシェンコ大統領は、ビジネスで成功した富豪であると共に、政治経験も豊富な指導者であり、就任前からすぐに国内の立て直しと欧米とロシアとの外交に奔走しているが、彼が直面している課題は容易に克服できそうにない。

「民主的に選出された」大統領
ポロシェンコとはどんな人物か

 5月25日に予定通りウクライナ大統領選挙が行なわれた。クリミアや「ウクライナは別の国」とする東部2州ではほとんど投票が行われず、投票が行われたのは全土の約84%の選挙区であり、平均投票率は約60%であったが、欧米などの選挙監視団は概ね高い評価をしており、大統領は民主的に選出されたというお墨付きを得ることができた。

 ロシアも、当初、大統領選挙に反対していたが、選挙直前に態度を一転し、選挙結果を尊重すると発表した。この理由については後述するが、ウクライナにとってこの意味は極めて大きい。何故なら、これまでロシアはウクライナ暫定政権を非合法政権、過激な民族主義者・ネオナチ政権として、直接的な関係樹立や交渉を拒否してきたが、ロシアの公認まで受けた真に正当な政権が生まれたことは、ウクライナの対ロ関係を含む外交の自由度がウクライナに付与されたことを意味する。

 大統領選挙には23人が立候補したが、当初から有力視されていたペトロ・ポロシェンコ(48歳)が54%の得票で当選した。なお、2位のユリア・ティモシェンコは13%の得票であった。過半数の得票者が出なかった場合は、6月15日に上位2名による決選投票が予定されていたが、第一回目の投票で大統領が確定し、ポロシェンコは6月7日に大統領に就任した。

チョコレート王の異名も 
ビジネスで財を築く

 それでは、ペトロ・ポロシェンコとはどのような人物なのだろうか。一言でいえば、富豪かつ政治家であり、所有資産はフォーブス推計で約13億ドル(約1337億円)に上るという。南部のオデッサ出身で、キエフ大学卒業後、カカオ豆を取引するビジネスで蓄財し、複数の製菓会社を買収した後、それらの会社を統合し、ウクライナ最大の製菓メーカー「ロシェン」(POROSHENKOの前(PO)と後ろ(KO)をとった名称と言われる)を設立、ロシェンの主力商品がチョコレートであることから、「チョコレート王」の異名も持つ。ポロシェンコは「ロシェン」での成功後、ルツキー自動車(自動車)、ボグダン(自動車)、レーニンスカヤ・クズニャ(造船)、第5チャンネル(テレビ局)などを次々買収し、ウクライナで7番目の富豪にのし上がったが、同時に政治的なキャリアも順調に積み上げてきた。

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「解体 ロシア外交」

著者

廣瀬陽子(ひろせ・ようこ)

慶應義塾大学総合政策学部准教授

1972年東京生まれ。専門は国際政治、コーカサスを中心とした旧ソ連地域研究、紛争・平和研究。主な著作に『旧ソ連地域と紛争――石油・民族・テロをめぐる地政学』(慶應義塾大学出版会)、『強権と不安の超大国・ロシア――旧ソ連諸国から見た「光と影」』(光文社新書)、『コーカサス――国際関係の十字路』(集英社新書)【2009年アジア太平洋賞特別賞受賞】など。

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