解体 ロシア外交

2014年6月25日

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 拙稿「ウクライナが見舞われる『第3の危機』」で論じた通り、昨年11月から始まったウクライナの危機は3つの展開を経てきたが、本稿を執筆している6月半ばでも、第三段階目の危機が続いており、その危機の度合いはむしろ悪化しているとさえ言える状況だ。5月25日に大統領選挙が行なわれ、正統性を備えた指導者が誕生してもなお、ウクライナの混乱は当分収束しそうにない。

南部へも広がるさらなる混乱

 まず前出の拙稿では、ウクライナの危機の4月末までの状況をカバーしたが、その後のウクライナ第三段階目の危機の展開について概観しておこう。

 4月17日のウクライナ、ロシア、EU、米国による4者協議は暴力の自制で一致したものの、合意は空文化したため、4月28日には欧米が対露制裁を強化した。すると、その欧米の動きに反発するかのように、親露派の攻勢が強まり親露派による公的庁舎などの占拠が拡大した。

 暫定政権は東部を沈静化することが出来ず、5月1日には、再度、徴兵制を導入することを発表した。徴兵制は、2013年10月にヤヌコーヴィチ政権が「志願制」に変更したばかりであったことからも、暫定政権の焦りが感じられる。そして東部の混乱は南部にも飛び火した。

 5月2日、ウクライナ南部のオデッサで大規模な衝突が起きた。石や火炎瓶が投げられ、少なくとも4人が死亡した。さらに、親ロシア派住民が立てこもった労働組合会館が親ウクライナ派に放火され、45人以上が死亡した。だが、死亡者の中に沿ドニエストル(モルドヴァ内の未承認国家で、ロシアへの編入を求めている)の住民がふくまれていたことから、暫定政権側は本暴動が沿ドニエストル住民、ひいてはロシアが煽動したとも考えている。なお、沿ドニエストルとオデッサは地理的に近いこともポイントだ。

 そして、この事件は、ウクライナに更なる恐怖感をもたらした。筆者はこの可能性にはきわめて懐疑的であるが、ロシアがロシアに接するウクライナ東部・南部・沿ドニエストルを結ぶ領域を地続きの形でロシアに編入しようとしているという議論が出てきたからである。

*旧ソ連地域では、火炎瓶は「モロトフ・カクテル」と呼ばれ、いくつかの作り方があるが、簡単に作れるため、現在でもテロやデモで使われている。5月2日のオデッサの衝突においても、火炎瓶を作っている様子を録画したビデオがインターネットに多数投稿されている。

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