チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年7月30日

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 中国の習近平指導部は今、共産党政権史上最大規模の腐敗撲滅運動を展開している最中である。2012年11月に習近平が共産党総書記に就任したと同時に、盟友で同じ太子党幹部の王岐山を腐敗摘発の専門機関である共産党中央規律検査委員会の主任に据えた。おそらくその時点から、凄まじい嵐を巻き起こそうとする決意は既に習近平の心の中で固められていたのではないかと思われる。

 2013年3月、国家主席のポストを首尾よく手に入れて名実共に中国の最高指導者となってからは、習近平は上述の王岐山と二人三脚で、無制限の捜査権を与えられた規律検査委員会という強力な「大目付」機関を用いて、党・政府と人民解放軍の幹部、特に高級幹部たちに対する厳しい腐敗摘発を始めた。

 去年9月4日、中国新聞社は習近平が国家主席に就任して以降地方や省庁の高級幹部9人が汚職の嫌疑をかけられたことを挙げ、「近年まれに見る厳しい取り締まりぶりだ」と報じたが、それはほぼ誇張のない事実である。過去30年あまりにおいて、腐敗問題で摘発を受ける高級幹部の数は毎年せいぜい6名前後であったから、今回の腐敗摘発運動の猛烈さは確かに前代未聞であると言えよう。

腐敗撲滅運動の真の目的は…

 以来腐敗の摘発はさらに猛威を振るって大きく前進した。去年の秋頃から摘発の矛先は中国共産党政治局前常務委員の超大物である周永康とその子分たちに向けられ、今年の3月からは、軍内の大物幹部である制服組メンバー2の軍事委員会前副主席の徐才厚ともう一人の軍事委員会前副主席の郭伯雄の身辺にも取り調べが及んだ。

 そして今年6月30日、習近平指導部は徐才厚の党籍剥奪を発表した。周永康の側近幹部だった公安省の李東生元次官や国有資産監督管理委員会の蒋潔敏元主任ら周永康の党籍剥奪も同時に発表された。特に徐才厚については、共産党軍事委員会の副主席で制服組のトップだった人物が腐敗摘発によって葬り去られたという前代未聞の事実が党内と軍内に大きな衝撃を与えた。

 その数日後の7月2日、指導部はさらに海南省の冀文林副省長や司法部門を統括する党中央政法委員会弁公室の余剛副主任らの党籍剥奪を決めたが、冀も余も前述の周永康前政治局常務委員の秘書を務めた経歴の持ち主であることから、周永康自身に対する摘発がすでに最終段階に入ったことが窺えた。

 このようにして、習近平指導部、というよりも習近平主席その人は今、党・政府と軍の幹部たちに対して史上もっとも大規模な腐敗撲滅運動を強力に進めていることが分かるが、彼は一体何の目的のために、このような凄まじい摘発運動を展開しなければならないのか。

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