6月30日に放送された中国中央テレビの7時のニュースは衝撃的だった。徐才厚元中央軍事委員会(以下、中央軍委と略称)副主席が党籍剥奪処分となり、司法手続きに入る事が発表されたのである。当日の中央政治局で決定が下されたが、会議の様子の映像は流されず、処分の内容を文字画像で淡々と伝えた(写真)。
これまでも徐の汚職疑惑は華僑系メディアで伝えられてきたが、処分が与える影響の大きさから内々に処分されるか、処分決定が引き延ばされるのではないかとの見方が強まる状況での公式発表だった。徐摘発について香港メディアは既に3月中旬に彼が病院から連行されたと報道しており、30日の発表でそれを裏付ける形になった。香港メディアの報道はもともと玉石混交であり、真偽の検証は困難だが、今回のように後からその内容の正しさが証明される場合も少なくない。
このような香港誌の中で中国軍を巡る内情暴露を連発するのが『前哨』誌だ。5月号では軍の高級将官50人が国防費の半額に当たる3400億元(約5兆7800億円)を勝手に配分したと報じた。今回の徐才厚まで波及する汚職をいち早く紹介したのも『前哨』誌だ。2012年3月号で中央軍委の拡大会議(2011年12月)において劉源・総後勤部政治委員が軍トップの汚職責任を糾弾したと伝えたのだ。これらの真偽はなかなか疑わしく証明しにくいが、少なくとも後者については徐の処分によりますます現実味を帯びてきた。
そこで今回は『前哨』誌7月号の「軍中『瓦房店帮』の崩壊」という記事を紹介したい。これまでの記事ほどのインパクトはないがこれまでの過程が丹念に記述され、徐才厚の台頭やそのネットワークを窺い知ることができる。徐才厚の汚職、逮捕された薄熙来、そして「最大の黒幕」とされる江沢民との結びつきを詳細に紹介している。
尚、同記事は30日の徐才厚党籍剥奪公表よりも前に執筆されており、徐才厚の更迭も見据えて分析がされている点も指摘しておきたい。
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【2014年 香港『前哨』誌7月号(抄訳)】
中共の軍隊は歴史的に派閥が乱立し、グループを組織し、派閥が作られてきた。大部分は歴史的経緯や政治的な結びつきによるもので地縁関係の結びつきはそれほど多くはない。于永波や徐才厚が取り立てた将官グループが「東北帮」(あるいは「東北の虎」と称される。「帮(パン)」はギャングのようなグループを意味する:筆者)と称されるが、的確ではない。地縁での結びつきが広い地域に及ぶことはなく、徐才厚派閥は「瓦房店帮」であり、軍内部でもこう称される。瓦房店とは大連市に所属する県級の市である。彼らは地縁を基礎に政治利益で結びついた派閥であり、メンバー出身地が瓦房店とは限らない。例えば谷俊山は河南省出身だが「瓦房店帮」一員とされる。