エネルギー問題を考える

2014年9月18日

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竹内純子 (たけうち・すみこ)

NPO法人国際環境経済研究所理事・主席研究員

慶応義塾大学法学部法律学科卒業。1994年東京電力入社。2012年より現職。水芭蕉で有名な国立公園「尾瀬」の自然保護に10年以上携わり、農林水産省生物多様性戦略検討会委員や21世紀東通村環境デザイン検討委員等を歴任。その後、地球温暖化の国際交渉や環境・エネルギー政策への提言活動等に関与し、国連の気候変動枠組条約交渉にも参加。自然保護から原子力損害賠償制度を含むエネルギー政策論まで幅広く、活動・提言を行なっている。消費生活アドバイザー。著書に『みんなの自然をみんなで守る20のヒント』(山と渓谷社)、『誤解だらけの電力問題』(ウェッジ社)。日経ビジネスオンライン「アベノミクスをコケさせない処方箋」

 河野太郎議員は、東日本大震災後に東京電力の要請で関東地域における卸電力取引所の取引が停止したことによく言及される。以下のブログ記事がその一例である。

2014年3月13日付ブログ記事 「ボッタクリをなくせ!」
○我が国の電力の卸市場が小さいのは、東京電力をはじめとする電力会社の嫌がらせによるところが少なくない。
○例えば、3.11直後に東京電力が、東電管内の送電網を卸電力市場で取引された電力に対してクローズしたのは記憶に新しい。
○東京電力は、計画停電をやらねばならないほど供給が逼迫していると言いながら、供給余力のある企業に対して送電網へのアクセスを拒否するという暴挙にでたのだ。

 その際、上記のブログ記事にもあるように、「嫌がらせ」「暴挙」のような穏やかでない言葉を伴うことが多いのだが、実際のところ何が起こったのかを改めて検証したい。

停止したのは託送業務の一部、
電力消費全体の1%程度

 まず、最初に確認しておくが、東電は送電線の第三者利用、即ち託送を一切停止したわけではない。停止したのは、卸電力取引所(JEPX)で成立した取引の託送、つまり託送業務の一部であり、量的には電力消費全体の1%程度である1

 JEPXの取引の主力であるスポット市場は、翌日分の電力を取引する。手元に余剰の供給力がある事業者が売り入札を出し、供給力不足、もしくは供給力は不足していないが手元の供給力よりも安い電気が売りに出ていれば差し替えたいと思っている事業者が買い入札を出し、JEPXがそれらをマッチングさせて、取引が成立する。そして取引成立の後、電力会社の系統運用部門が行う託送可否判定というプロセスがある。成立した取引を送電網に流しても運用容量を超える等の問題が起きないかどうかをチェックするのである。

 東電がJEPXにおける取引の停止を要請したのは、震災後の非常事態への対応に忙殺される中で、託送可否判定業務を実施することは困難と判断したためだ。託送可否判定は、JEPXの取引に対してだけでなく、全ての発電計画の変更に対して行われる。電力会社も新電力も、自分の需要家の需要予測を変更したり、電源にトラブルがあったりすれば、それを補うために都度発電計画を変更するが(これを通告変更2という)、それを行うたびに、電力会社の送配電部門は託送可否判定を行って、計画変更によって系統上問題が発生しないかどうかを確認している。

1:ちなみに、議員はその点は正しく理解されている。2011年6月16日付の議員のブログ「脆弱な電力取引基盤」を参照。

2:通告変更の手続きについて詳細は一般社団法人電力系統利用協議会のルール本文4-67
http://www.escj.or.jp/making_rule/guideline/data/rule_japan140617.pdf

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