無添加の食品は安全で安心――。いま、日本人の多くがこのような感覚を抱いている。そして、食品企業は消費者のこの感覚に応じようと、“無添加”を謳う食品を売ることに力を入れている。
無添加とは、食品添加物が含まれていないことだ。では食品添加物とはなにかというと、食品を調理加工製造するとき添加される物質のことだ。日本人の無添加志向が根強いのは、裏を返せば「食品添加物は危険で不安」と感じている人が多いことの表れでもある。
だが、冷静になって、食品添加物のリスクを考えてみるとどうだろう。そこには、感覚と現実のギャップがあるのではないか。
「日本の法律を守っている限り、食品添加物を食べても危険はないと言い切ってよいと思います。無添加だから健康で安全という理論も成り立ちません」
鈴鹿医療科学大学保健衛生学部の長村洋一教授は、このように強調する。長村教授は食品化学を専門とし、市民に食品の安全性と危険性を知らせる活動もしている。
食品添加物はどうして危険はないといえるのか。
「大切なのは、“量”です。害を及ぼす物質がどれだけの量、食品に入っているかを考えてみることです」
食品添加物のうち、安全性と有効性の確認を必要とし、厚生労働大臣が指定する「指定添加物」は、それぞれ使用可能量が食品衛生法に基づいた方法で決められている。まず、ネズミなどの動物が一生食べ続けても有害な影響の出なくなる「無毒性量」を実験で出す。さらにその量を「安全係数」の100で割り、「一日許容摂取量」を算出する。その範囲内で、食品添加物入りの食品は出回ることになっているのだ。実際、ほとんどの食品では、一日許容摂取量の上限の1〜数%の量しか指定添加物は使われていない。
毒性が現れだす量の値は「閾値(いきち)」という。世の中で使われている食品添加物各種は、それぞれの閾値をはるかに下回るレベルで使われているわけだ。