学びなおしのリスク論

2014年9月22日

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漆原次郎 (うるしはら・じろう)

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、科学技術関連の記事を寄稿。早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラム修了。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』『日産驚異の会議』『宇宙飛行士になるには』など。

 無添加の食品は安全で安心――。いま、日本人の多くがこのような感覚を抱いている。そして、食品企業は消費者のこの感覚に応じようと、“無添加”を謳う食品を売ることに力を入れている。

 無添加とは、食品添加物が含まれていないことだ。では食品添加物とはなにかというと、食品を調理加工製造するとき添加される物質のことだ。日本人の無添加志向が根強いのは、裏を返せば「食品添加物は危険で不安」と感じている人が多いことの表れでもある。

 だが、冷静になって、食品添加物のリスクを考えてみるとどうだろう。そこには、感覚と現実のギャップがあるのではないか。

 「日本の法律を守っている限り、食品添加物を食べても危険はないと言い切ってよいと思います。無添加だから健康で安全という理論も成り立ちません」

 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部の長村洋一教授は、このように強調する。長村教授は食品化学を専門とし、市民に食品の安全性と危険性を知らせる活動もしている。

 食品添加物はどうして危険はないといえるのか。

 「大切なのは、“量”です。害を及ぼす物質がどれだけの量、食品に入っているかを考えてみることです」

 食品添加物のうち、安全性と有効性の確認を必要とし、厚生労働大臣が指定する「指定添加物」は、それぞれ使用可能量が食品衛生法に基づいた方法で決められている。まず、ネズミなどの動物が一生食べ続けても有害な影響の出なくなる「無毒性量」を実験で出す。さらにその量を「安全係数」の100で割り、「一日許容摂取量」を算出する。その範囲内で、食品添加物入りの食品は出回ることになっているのだ。実際、ほとんどの食品では、一日許容摂取量の上限の1〜数%の量しか指定添加物は使われていない。

 毒性が現れだす量の値は「閾値(いきち)」という。世の中で使われている食品添加物各種は、それぞれの閾値をはるかに下回るレベルで使われているわけだ。

長村洋一氏。鈴鹿医療科学大学保健衛生学部医療栄養学科教授。同大学副学長。専門は食品化学。薬学博士。“多幸之介先生”の愛称があり、食情報を提供するFOOCOM.NETでコラム「多幸之介先生の健康と食の講座」をもつ。健康食品の問題に適切に対処できるアドバイザリースタッフを教育界で育てることを目的とする「一般社団法人日本食品安全協会」の理事長もつとめる。同協会は、健康食品に関する知識や判断力をもっていることを証明する「健康食品管理士」の資格制度を確立し、健康食品管理士の増加を目指している。開始10年目の2014年現在、認定者数は約9000名。。

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