依存症大国 日本
事前対策なしにカジノ合法化を進めるな


滝口直子 (たきぐち・なおこ)  大谷大学文学部社会学科教授

1955年生まれ。カリフォルニア大学民俗・神話学際プログラム、博士課程修了。別府大学講師、大谷大学短期大学部、文学部助教授をへて2000年より現職。専門はアディクション/ギャンブル問題等。

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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カジノが合法化となるIR推進法案が、秋の臨時国会にて成立する可能性が高い。しかし、法案が成立する前に、日本が世界トップクラスのギャンブル依存症大国であるという事実を理解して頂きたい。日本にはパチンコによって世界のギャンブルマシーンの60%が集中し、加えて競馬等の公営ギャンブルによってギャンブル依存症有病率は成人人口の4.8%、デンマークやオランダ、ノルウェーなどが1%未満であるのとは対照的に、世界最高レベルなのだ(表)。

 ギャンブル依存症とは何か。「ギャンブルには二度と手を出さない」と迫真の演技で家族や親戚に土下座して泣きながら多額の借金の肩代わりをしてもらう。それなのに「今度こそ、絶対に勝つ」とギャンブルを続けた結果、失職や離婚、時には自殺や犯罪に手をそめる。彼らを「ギャンブル依存という病気で苦しんでいる人」と言っても、世間が納得するのは難しい。だが皆さんに考えて頂きたい。ギャンブルは限度内で楽しむエンターテイメント、生命や家族とひきかえでも止められないとは、尋常ではない。病気なのである。

 ギャンブル依存症は、ギャンブルへのブレーキがきかないコントロール障害。ギャンブルの機会がたくさんあり、敷居が低いほど有病率は高いとされている。

 ではなぜノルウェーなどの国々は、ギャンブル依存症になる人が少ないのだろうか。その理由は国をあげてのギャンブル害の最小化を目指す責任ギャンブリング政策の実施にある。街中にある民間のスロットマシーンにはまる人が増加したノルウェーでは09から11年にかけて国営に切り替え、1日、1カ月に使える金額上限を定めた2種類のマシーンを導入した。

 1つはコンビニに2、3台おかれたマルチックスで、1日の上限は400クローネ(7000円程度)、1カ月では2200クローネ(3万8000円程度)である。1時間プレイをすると10分、マシーンは自動的に停止する。もう一つはベラゴと呼ばれるマシーンで30~40台ほどが喫煙、禁煙に分離されたパーラーに置かれている。座ってプレイをすることができるが、やはり1時間経過すると自動的に30秒停止する。1日の上限は800クローネ(1万4000円程度)、1カ月は4000クローネ(6万8000円程度)である。ちなみにノルウェーではハンバーガーとコーラで1000円程である。

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著者

滝口直子(たきぐち・なおこ)

大谷大学文学部社会学科教授

1955年生まれ。カリフォルニア大学民俗・神話学際プログラム、博士課程修了。別府大学講師、大谷大学短期大学部、文学部助教授をへて2000年より現職。専門はアディクション/ギャンブル問題等。

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