2024年4月20日(土)

World Energy Watch

2014年10月10日

・日本の1人当たりGDPは20年前から世界20位以内。「もっと稼いでGDPを増やさなければならない」と政治家は叫び、刹那的な「マネー資本主義」に走っている。

⇒日本の1人当たりGDPは20年前世界一だった。今は20位以内にはない。データによっては韓国にも抜かれている。平均給与は97年から実質10%減った。

・原発の廃炉費用を上乗せするだけでも、電気料金はさらに上がっていく。負担が発生するのは2,3年後。メーカーの社長は再稼働で目先の電気料金が下がればいいと考える。

⇒廃炉、核燃料処理費用などは、原発のコスト計算に含まれており、既に回収されている。廃炉が始まっても負担が増えることはない。再稼働とは関係がない。

・イタリア、フランスも対日貿易黒字。両国が売り込んでいるのは、ブランドと田舎の食品であるワインなど。日本だって里山の恵みを生かして同じような路線を追求できるはず。

⇒イタリアもフランスも輸出で稼いでいる商品は、機械類、自動車、化学薬品などで、ワインなどの占める比率はごく僅か。先進国が農産品で生きていける筈はない。

 以下では藻谷の主張を一つひとつ、データに基づき詳細に検証してみたい。

先進国が農業で生きていけるわけがない

 藻谷の主張の結論を最初に検証しておきたい。藻谷の主張の間違いがはっきり分かる結論になっている。経済成長は不要という水野和夫の主張を検証した『「資本主義の終焉?」脱成長路線では世界を救えない』で、元経済産業大臣の枝野幸男の主張「これからはニッチ産業で輸出すべき、例えば盆栽」に触れたが、藻谷の結論は経済音痴と言っていい枝野並だ。

 藻谷は、「フランス、イタリアに注目している。ブランド衣料宝飾品、田舎の産品のワイン、チーズ、パスタにオリーブオイル。ハイテクではなく、デザインと食文化を売っている。日本だって里山の恵みをもっと生かして、同じような路線を追求すべき」と言っているが、フランスとイタリアの輸出品目を調べると、両国ともに大きく外貨を稼いでいるのは機械、自動車などの工業製品であり、ブランド品でもワインでもチーズでもない。先進国の産業構造からすれば、農産物で十分な外貨を稼げないのは経済学の常識だ。日本向けには工業製品を売るのが難しく、偶々ブランド品や農産物しかないということだ。他国向けには工業製品の輸出で稼いでいる。


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