藻谷浩介が、日刊ゲンダイで「安倍政権は経済的な反日の極み」と主張している。これを「過激なようで論理的」と持ち上げている一部のマスコミは、論理的と言えるだけのデータの検証を行ったのだろうか(http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/153666)。藻谷のあげている間違いだらけのデータと主張を鵜呑みにしただけだろう。
経済とエネルギーに関するデータを基に藻谷の主張を検証すると、主張にデータの裏付けはなく、藻谷の主張に都合の良いように話を変えていることが分かる。筋道と過程が無茶だから、最後の結論にいたっては、とんでもないことになっている。藻谷の主張は経済的なデータに基づくものではなく、単に「原発も、経済成長も不要、里山を活かせ」という思想・心情を披歴したものに過ぎないと言っていい。経済の話として主張することにより、一部のマスコミを含め経済データの詳細を知らない人間を騙すことにもなっている。
根拠なき藻谷の主張
藻谷の主張の骨子は次の通りだ。何箇所か数字が出てくるが、その裏付けデータは示されていない。燃料代の上昇から対中貿易赤字までを円安が引き起こしたとして、円安を作り出した安倍首相の経済政策を非難しているが、その根拠はない。研究所に勤務する人間がデータをよく調べないで理論を構成するというのは、にわかには信じ難いが、調べると、藻谷の主張の根拠となるデータや数字は間違っていることが分かる。どこが違うのか、まず箇条書きで簡単に説明する。
・燃料代の輸入が増えているが、原発の停止が理由ではない。円安が理由だ。原発再稼働というのは、相手をけがさせて、薬を買えというような話だ。
⇒原発の停止により燃料の輸入数量は増え、円高だった11年、12年にも輸入代金は増加している。円安が原因ではない。円安にして再稼働しろと言っているという主張は成立しない。
・輸出も増えている。日本のものづくりの国際競争力が落ちているというのは、とんでもない誤解。ハイテク部品や高機能素材が売れ続けている。
⇒世界の貿易は日本の輸出以上に伸びている。日本の世界貿易に占める比率は落ち続けている。デフレ時代に日本が相対的な国際競争力を失ってきたからだ。
・円安政策が対中貿易の赤字を招いている。対中貿易赤字を招く政策を経済的な反日政策とすると「安倍政権は反日の極み」だ。
⇒対中貿易の赤字額は傾向的に増えている。円安であれば輸出も増えるので、円安と対中貿易の赤字とは関係がない。日本の対中輸出の競争力が落ちているのが赤字増の原因だ。