拡大画像表示
さらに、藻谷の説明が間違っているのは輸入代金の増加を全て円安のせいにしていることだ。量の増加に加え、化石燃料価格の上昇も大きな要因である。特に、震災により原子力というオプションを失い、天然ガスが必要になった日本は足元を見られ高い天然ガスでも買わざるを得なかった。日本の燃料輸入額の推移と円・ドルの為替の推移は図‐2に示されている。13年の円安が輸入額の増加を招いたのは事実だが、円高時の輸入額の増加から円安よりも量と価格が大きな要因であることが分かる。
量の増加と価格の上昇を無視し、円安が貿易赤字を作り出しているという藻谷の主張は、完全に誤りだ。藻谷が量と価格という基礎データを調べていないとすれば、研究機関に勤める立場としては釈明できないミスだろう。もし、調べた上で、量、価格という基礎データを無視したのであれば、それはまるで扇動家の行いだ。
中国からの輸入が増えているのは円安のため?
安倍政権になって、中国との貿易が1兆円の赤字になった。これは円安のためだとして「経済的反日」と安倍政権を藻谷は攻撃している。鳩山政権時代には4兆円近い黒字だったので、鳩山政権がもっとも「親日的政権」としている。バカバカしいにも程がある。円安になれば、輸入額も増えるが、輸出額も増える筈だ。円安が中国との貿易赤字の原因になる訳がない。第一、貿易赤字になれば、反日になるのか。鳩山内閣時代も対中国では貿易赤字だ。藻谷は常に日本が3兆円から4兆円の貿易黒字額になる香港を中国に含め計算しているだけだ。
拡大画像表示
藻谷は、企業がコストを下げるために中国から安い原材料を購入するから赤字が膨らんでいるとも主張しているが、まったく馬鹿げた説明だ。中国との貿易額の推移は図‐3の通りだ。11年、12年の円高の時代も日本の輸入が増え、その上貿易赤字は拡大している。原因は日本の輸出が伸びず、減少していることだ。特に、輸出額1位と2位の電気機器、機械類の輸出額は、11年から13年にかけ、それぞれ15%減、36%減と大きく落ち込み、中国の輸入額に占める日本のシェアは11年11.2%、12年9.8%、13年8.3%と減少を続けている。藻谷は日本の製造業の競争力は強いとし、リーマンショック前に輸出額は過去最高になったとしているが、ここでも藻谷はデータを読んでいない。