再生可能エネルギーの接続保留問題
高収益保証が招いた投資バブル

FITが失敗する理由


山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)  常葉大学経営学部教授

住友商事地球環境部長等を経て現職。経済産業省地球温暖化対策技術普及等推進事業審査委員会、東京商工会議所エネルギー・環境委員会委員などを務めている。近著に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム)。

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投資事業に携わった方であれば、内部収益率という言葉をご存知だと思う。あまり聞きなれない言葉だが、Internal Rate of Return (IRR)を日本語にしたものだ。私が初めてこの言葉を聞いたのは、80年代だった。当時米国の資源開発を米国企業との合弁事業として進めていたが、その合弁契約交渉で米国企業が投資の判断に利用していたのがIRRだった。

 日本企業は、投資に際し「資金繰り」とか「投資額に対して利益額がいくらあるか」という考えで投資の判断を行っていたが、米国企業は、「手元に残る資金‐キャッシュフローを元に」「時間の価値も考慮して」計算を行っていた。それがIRRだった。その後日本企業でもIRRの利用が広まってきた。

 IRRでは前提となる売上、コストなどの数字の変動が結果にどう影響を与えるか知るために感度分析と呼ばれる手法が利用される。前提の数字を入れ替えれば結果となるIRRの数字は当然だが影響を受ける。このIRRを固定価格買い取り制度(FIT)導入時の太陽光、風力などから発電される電気の買い取り価格決定の計算に用いたことが、事業者に有利な収益を保証し、結果特定の地域での事業の集中を招き、九州電力などによる接続保留の問題につながったと言える。

リスクが限られた太陽光発電事業
IRR8%は魅力的

 FITの設計に際して太陽光発電事業に認められたIRRは6%だったが、当初3年間は導入を促進するために利益率の上乗せが図られ税引き前で7%から8%に設定された。買い取り期間は20年間だ。IRRと言われても、具体的な利益額がいくらくらいになるのか分かり難いと思うので、一例を示してみたい。

 1000万円投資し太陽光発電事業を行い20年間に亘り収益が得られる場合、税引き前で手元に残る資金、キャッシュフロー(収益に減価償却費を加えた金額)が毎年100万円あればIRRは8%になる。毎年90万円であればIRRは6%だ。減価償却費と借入金の金利を考えると、多くの事業で、投資額は10年あるいは11年で全て回収でき、残りの期間は全て資金が手元に残るとみて良い。

 通常の投資事業であれば、8%のIRRでは低すぎるために、事業に踏み切る企業はないだろう。事業には様々なリスクがあり、見込んだ収益が得られるかどうか不透明なためだ。例えば、見込んだ売り上げが得られないかもしれないし、コストが予想を上回るかもしれない。しかし、太陽光発電の1kW時当たりの売り上げは保証されている。日照時間も年により大きく変わることはない。リスクが非常に限られた事業でIRR8%は明らかに事業者には極めて良い数字だ。1000万円の投資で20年間に亘り100万円が手元に残るのであれば、国債に投資するより遥かに良い。さらに、太陽光発電事業はもっと儲かる投資にもできるのだ。

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著者

山本隆三(やまもと・りゅうぞう)

常葉大学経営学部教授

住友商事地球環境部長等を経て現職。経済産業省地球温暖化対策技術普及等推進事業審査委員会、東京商工会議所エネルギー・環境委員会委員などを務めている。近著に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム)。

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