Inside Russia

2014年10月24日

»著者プロフィール

 積雪、航空機事故、そしてアルコール禍…。ロシアに災いをもたらす3つの現象が同時に起こり、国家の危機の守護者となっていた「真の友人」(プーチン大統領)を死に追いやった。初雪が降った今月20日深夜、モスクワ郊外のブヌコボ空港でプライベートジェット機「ファルコン50」が炎上した。中に乗っていたのは、ビジネスフォーラムの出席を終え、空路、パリに戻ろうとしていたフランスの石油大手「トタル」CEO、クリストフ・ドマルジェリ氏(63)。パイロットを含め、搭乗していた4人が非業の死を遂げた。

 事故原因は滑走路内を走行していた除雪車とジェット機の衝突だった。発生当時、現場は霧が立ちこめ、視界は350メートルしかなかった。ロシアの捜査当局は直後に逮捕した除雪車の運転手は「アルコール中毒状態にあった」と発表した。

 地元ジャーナリストは自虐的にこう書き記した。「ロシアを好きな外国人は、ロシアの至らぬ所も許していた。そんな彼を酔っ払いの男が殺した。これこそがロシアの悲劇だ」。

ウクライナ問題でプーチン政権を擁護

 ドマルジェリ氏は白い口ひげと歯に衣着せぬ物言いがトレードマークだ。2007年にトタルのトップに就任して以来、中東、アフリカ、欧州の各国首脳と個人的な関係を作り、数々の大型油田開発を促進、企業の時価総額を1020億ユーロ(約13兆8300億円)にまで押し上げた。

亡くなったドマルジェリ氏(写真:ロイター/アフロ)

 ハイリスク・ハイリターンの案件を見事に成功に収める経営手腕ぶりは、世界を股にしのぎを削る石油メジャーの業界でも尊敬の念を持って評され、ドマルジェリ氏には「カリスマ経営者」「ミスター中東」の異名もついて回った。祖国のバルス首相にして、「フランスは、偉大な起業家でありパトリオット(愛国者)を失った」と言わしめた。

 ドマルジェリ戦略の中心地の1つがロシアだった。プーチン氏の親友でもあるゲンナジー・チムチェンコ氏が経営権を握る天然ガス大手の「ノバテク」と手を組み、北極圏ヤマル半島で総額2700億ドルにもなる大型LNGプロジェクトを打ち立てた。2017年から供給を始め、ロシアはトタルの大きな取引相手国となる予定だった。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る