オトナの教養 週末の一冊

2014年12月5日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。福島支局、立川支局、経済部、政治部、ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスクを経て2014年より現職。著書に『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』『御社の寿命』、(いずれも中央公論新社)など

 本書を読んでハーバード大学ケネディスクールの半円形の小さな教室の光景がよみがえってきた。3年前にハーバードに研究員として在籍していたとき、著者のジョセフ・ナイ教授に頼んで特別にこの本のタイトルと同じ「大統領のリーダーシップ」という授業を聴講させてもらった。

 ナイ教授の授業は多くの留学生に人気があり、受講希望者の数と30人ほどでいっぱいになる教室のキャパシティとが全く釣り合わないため、正規の学生でも受講するには至難の業である。このためナイ教授から許可をもらい、特別に授業を聴講させていただいた。授業を欠席する学生はほとんどおらず、みんな熱心に参加する。留学生が半分ぐらいを占めていたが、授業は多彩なバック・グラウンドを持つ学生にナイ教授が問いかけ、学生の意見に対して議論を重ねてゆく形式で行われた。本書はこうした授業がもとになっている。

なぜケネディは扱われなかったのか?

『大統領のリーダーシップ』
(ジョセフ・S. ナイ 著、藤井清美 翻訳、東洋経済新報社)

 アメリカはジョージ・ワシントンからバラク・オバマまで44人の大統領を生んできたが、本書は主に20世紀の大統領に焦点をあて、特に分析しているのが、セオドア・ルーズベルト=TDR(26代)、タフト(27代)、ウイルソン(28代)、フランクリン・ルーズベルト=FDR(32代)、トルーマン(33代)、アイゼンハワー(34代)、レーガン(40代)、父ブッシュ(41代)の8人である。

 20世紀初めから太平洋戦争前後にかけてアメリカの覇権が確立してゆく中で役割を果たした大統領のほか、冷戦の終結とその後アメリカの一極体制に向かう世界の変化を取り仕切った大統領にスポットライトを当てている。

 ハーバードのケネディスクールで扱う授業なのになぜジョン・F・ケネディ(JFK)を扱わないのか、と思われる方もおられるかもしれない。筆者(中村)も最初はそう思った。だが、ナイ教授はそうした学生の疑問に答えるように、授業の冒頭で「ケネディは本学も名前をもらっている大統領だが、在任が3年に満たず、評価は難しい面がある」と説明していていた。本書もまさにその考え方を踏襲している。

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