世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年12月5日

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 10月27日付のProject Syndicateのサイトで、リチャード・ハース米外交問題評議会(CFR)会長が、中東における「イスラム国」(IS)の勢力拡大や、ウクライナにおける力による領土拡張等を例に挙げ、現在、既存秩序が多くの挑戦に晒される無秩序時代が到来しつつある、と述べています。

 すなわち、我々は、世界史上1つの時代の終焉と、新たな時代の始まりを目撃している。冷戦の終結を告げたベルリンの壁解体から25年、その後の時代は米国の優越が続き、比較的解放された社会と政治制度が生まれ、主要国間では多くの協力が行われた平和な時代であった。そうした時代が今終わろうとしている。

 中東では、30年戦争初期のような、政治的・宗教的な紛争が国境を超えて行われている。ウクライナでは、軍事力で領土を獲得してはならないという法的原則に基づく安定した欧州秩序に対し、ロシアが挑戦を仕掛けている。

 アジアの大部分では平和が保たれているが、それもいつ不安定化するかわからない仮初めの平和である。アジアには、多くの解決されていない領有権問題や、ナショナリズムの台頭があり、紛争を防いだり、それを和らげたりするための二国間・多国間の外交準備も不足している。

 また、気候変動やデジタル時代の到来、伝染病に対応するための努力も不十分である。

 こうした世界的な無秩序化が進む原因の一部には、米国の影響がある。2003年のイラク戦争は、スンニ派とシーア派の緊張関係を悪化させ、イランの野望を防いできた障壁を取り除いてしまった。最近では、シリアの体制変換を要求していたにもかかわらず、シリア政府が米国の警告を無視し、化学兵器を繰り返し使用した後でも、米国は何もしなかった。その後地域で生じたのは、「イスラム国」がその空白を埋めるという事態である。アジアでは、いわゆる戦略的ピボットを新たな政策として声高に掲げたものの、実際にはほとんど何もしていない。

 これらの結果、米国の信頼性に対する疑いが広まり、他の多くの国々はますます独自の行動をとるようになっている。

 以上の事実は、必ずしも我々が新たな暗黒時代に直面しつつあることを意味するわけではない。相互依存が対立にブレーキをかけることもあるし、世界経済はこの6年間でいくぶん回復した。欧州やラテンアメリカの大部分は安定しているし、アフリカでもそうである。

 新たな無秩序時代の到来を押し返すことも可能である。イランとの国際的な交渉は、彼らの核能力を制限させる可能性が残されている。また、各種の措置を通じて、「イスラム国」を軍事的に弱体化させ、戦闘員のリクルートや資金の流れを減らすこともできる。制裁と油価の低下を踏まえれば、ウクライナについてロシアの妥協を引き出させることもできるかもしれない。

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