「ウルムチでデモが起きた7月5日、日没までの間だけで、約400人のウイグル人が殺されたという情報を得ています」
世界ウイグル会議の議長、ラビア・カーディル女史は沈痛な面持ちで語り出した。事件からおよそ10日後に、同会議が拠点を置く、米国ワシントンDCで話を聞いたときのことである。
一方、中国政府はこの騒乱での死者数を190人超と発表。しかも、その大半が「暴動」に巻き込まれた漢民族であったと主張している。
暗闇の中で、1万人のウイグル人が消えた?
日本のマスメディアの多くが、「中国当局の発表によると」との“ことわり”は入れつつも、この数字を半ば事実と認めたかのような報道をしてきた。筆者がそのことに触れた途端、カーディル議長はぐっと身を乗り出し、新たな戦慄の情報を語った。
「問題はその日の夜なのです。日没後、ウルムチのウイグル人居住地区が一斉停電した。その後数時間、絶え間なく暗闇のあちらこちらで銃声が鳴り響いたそうです」
その不気味な様子を、密かに撮影した映像が後日インターネット上に公開された。デモの参加者のみならず、見物していただけの人も大勢が銃弾の犠牲になったと推測されている。
「結果、翌朝には、その地域で約1万のウイグル人が消えたとの情報があります」
「消えた? 拉致されたのですか?」と問い返すと、「殺された者、逮捕された者……。いずれにせよ、一夜にして消えたウイグル人が1万にものぼるというのです。当局は、死傷者をすべて車に放り込んで運び去った。だから、家族の元には遺体さえ残っていない。消えたとはそういうことです」
にわかに信じられず言葉を失っていた筆者に、議長はその情報源の一部を明かしてくれた。事件当日、現場を目撃した後外国へ逃れた人からの情報のほか、別の相当信頼に足ると思われる情報源もある。その情報源に、アメリカ政府筋も注目していると、後日、別の筋から聞いた。