WEDGE REPORT

2009年8月4日

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「価格は(100ドルを切る)99ドルですが、性能は従来のデジカメと何ら変わりがありません。今年は全世界で200万台以上は売りたいですねえ」─。

 富士フイルムの松本雅岳・電子映像事業部営業部長は開発まもないコンパクトタイプの“99ドルデジカメ”を手に満面に笑みを浮かべた。

“99ドルデジカメ”は富士フイルムが中国やインドなど新興国市場開拓の切り札として開発した。8月から日本を含む全世界で販売するが、いくら価格下落傾向が続くとはいえ、「平均売価は180ドル前後」(松本部長)といわれるコンパクト型デジタルカメラ市場では半値近い思い切った値付けだ。

「安かろう悪かろう」ではない低価格モデル

 では何故、富士フイルムは低価格品を開発したのか。その理由は「ボリュームゾーン」(経済産業省製造産業局)と呼ばれる新興国市場の中間層の勃興にある。人口が31億人のアジアを含む同40億人の新興国市場は経済成長に伴って、「可処分所得が年間5000ドル以上の中間層が急拡大、一部統計によるとこの5年間で2億5000万人から6億3000万人に増加した」(同)といわれている。日本の総人口のざっと5倍だ。

 ただ、これまでこれら新興国向けは「欧米先進国向けハイテク製品の仕様を一部変更した廉価モデルを投入してきた」(松本部長)という事情があった。「新興国市場を本格的に開拓していくためには専用モデルが必要」(松本部長)と考えた同社では低価格モデルの開発を決断する。だが、性能や品質などは落とすわけにいかない。

始めたのが設計段階からの機能の全面的な見直し。例えば手振れ防止装置。「(市場調査などで)国内市場でもそれほど重視されていないことが分かっていた」(同)こともあり、取り外した。

 部品についても専用品の開発は避け、極力、汎用品を採用したが、レンズやCCD(電荷結合素子)などキーコンポーネントは日本製を採用、「安かろう悪かろうではない」と松本部長は強調する。

リコー、パナソニック…
新興国中心の地域密着型製品開発

 実はこうした低価格な新興国向け専用モデルの開発はこのところ花盛りなのだ。これまで日本メーカーは欧米先進国を中心に海外市場を開拓、投入する商品もハイテク製品に特化、技術革新などのペースが時に市場の要求のペースを上回ることが多かった。いってみれば「企業が競合メーカーより優れた製品を供給し、価格と利益率を高めようとすると市場を追い越し、ユーザーが必要とするもの以上を供給する懸念があった」(経産省関係者)のだ。新興国市場の開拓ではこうした弊害をこれまで以上に打破する必要があり、「機能などを絞り込んだ低価格な専用モデルの投入が不可欠」(同)という認識が一段と強まってきたわけだ。

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