WEDGE REPORT

2015年2月24日

編集部(以下、─―) パリでのテロ事件に続いて、日本人人質の問題もクローズアップされました。

細谷雄一(以下、細谷):「シャルリー・エブド」の問題と、今回の人質事件は、質的に大きく違います。各国の国民が人質になっていますが、他国のメディアでは通常大きく取り上げません。人質事件は基本的には当事国が大きな関心を寄せる問題です。

 しかし、「シャルリー・エブド」の場合は、発言する、何かを書くという行為自体が狙われました。表現の自由というフランスが掲げる根源的な価値に対する挑戦ですから、国際社会が連携して対応しなくてはなりません。しかし、現在の世界で宗教、価値観の壁を乗り越えて和解するということは極めて難しい状況となっています。

テロと移民問題を混同するな

─―欧州ではイスラム教徒(ムスリム)や移民に対する排外主義が強まっていると聞きます。

サルコジ前大統領は顔全体を覆い隠すベールの着用を禁止する「ブルカ禁止法」を成立させた(YOUSSEF BOUDLAL/REUTERS/AFLO)

細谷:欧州の戦後70年は、アウシュビッツ解放を起点とし、ホロコーストの反省の上に成り立っています。人種やナショナリズムを乗り越え、移民に対して非常に寛容な社会をつくりました。寛容さ、多様性というものが、欧州を統合する上での非常に大きな価値だったわけです。

 しかし、1960~70年代の脱植民地化の時期と、冷戦終結後の2度にわたって、大きな津波のように移民が増えたことにより、2つの意味で当初想定していなかった事態が起きました。

 まず1つが移民の規模。フランスでは、イスラム系だけで450~500万人で、全体では700万近い移民がいるといわれています。戦後初期には移民の割合は極めて小さな比率でしたから、現在のように国民の10%を超えるほどまで移民が増えてしまったのは想定外でした。

 2つ目の想定外は経済です。移民に対する寛容さというのは、戦後の欧州の経済成長と不可分に結び付いていました。経済的余裕があったから、とりわけ社会党政権の下では移民に対してさまざまな社会保障のサービスが拡充されてきました。ところが、経済成長が失速し、ユーロが非常に厳しい緊縮財政を要求しているために、移民の多くが属する貧困層に対して手厚く社会保障を提供できなくなってきています。

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