チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年3月13日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団特任研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 2015年3月5日、全人代開幕当日に行われた政府活動報告の中で、李克強首相は、「海洋権益を断固守り、海洋強国という目標にまい進する。ハイテク兵器・装備の開発に一層注力する」と述べた。中国国防予算は、前年度比10.1%増で、約16兆8500億円に上り、日本の防衛予算の3倍を超える。海空軍の予算の伸びが大きいが、中でも、海軍の予算が最も厚く手当されていると言われる。海軍に予算が多く配分されるのは、中国の「一帯一路」イニシアティブにも関係することだ。「一帯一路」の「一帯」とは「シルクロード経済ベルト(陸上)」、「一路」とは「21世紀海上シルクロード」を意味している。陸と海のシルクロード経済圏構想である。

 海外では中国の国防費にも注目が集まる一方で、中国国内で最も関心が高いのは、経済発展と環境汚染対策である。中国は、2015年の経済成長目標を「7%前後」に引き下げ、構造改革を加速させる方針を打ち出した。しかし、中国の経済発展は、国外への活動拡大なしには成し遂げられない。全人代に合わせて8日に開かれた記者会見において、王毅外交部長は、「『一帯一路』は、(中国単独の利益追求ではなく)各国との共同発展が理念だ」として、巨大経済圏創出の意欲を見せた。

 言葉だけではない。中国の「一帯一路」は、習近平指導部によって、既に実践されている。そして、そこでは海軍が大きな役割を担っているのだ。

中国の投資に期待するギリシャ

 2015年2月19日、ギリシャのピレウス港に停泊中の中国海軍大型揚陸艦「長白山」の甲板上に、チプラス・ギリシャ首相の姿があった。中国海軍の艦艇が地中海に姿を現すのは、もはや珍しいことではなくなったが、ヨーロッパの首脳が中国海軍の艦艇に姿を見せるのはやはり珍しい。

 アデン湾での海賊対処活動を終えた中国海軍第18次護衛艦隊が、イギリス、ドイツ、オランダ、フランスの欧州4カ国を訪問し、次いでギリシャを訪問した。この入港時期が中国の新年である春節と重なり、チプラス首相が、「長白山」艦上で催された新年会に招待されたのだ。

 中国外交部は、そのホームページで、艦上新年会の様子を、写真を並べて紹介し、新華社は、中国海軍儀仗隊の栄誉礼を受けて赤じゅうたんの上を歩くチプラス首相の姿を報じている。華々しい報道だが、注目すべきは新年会における同首相の発言だろう。

笑顔で挨拶するギリシャのチプラス首相(写真:ロイター/アフロ)

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