少女を自爆テロに利用する卑劣
IS信奉組織「ボコ・ハラム」の闇

誘拐した少女を洗脳し、加担させる


佐々木伸 (ささき・しん)  星槎大学客員教授

共同通信社客員論説委員。ベイルートやカイロ支局長を経て外信部副部長、ニュースセンター長、編集局長などを歴任。

WEDGE REPORT

時間軸の長い視点で深く掘り下げて、世界の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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アフリカ・ナイジェリアのテロ組織「ボコ・ハラム」による少女の自爆テロが激化の一途をたどっている。オバマ米大統領は28日、アフリカ連合本部で同組織を“殺人者集団”と非難したが、テロが終息する見通しはない。

ナイジェリアで女生徒誘拐。 過激派組織指導者、アブバカル・シェカウが声明(ビデオ画像)(画像:REX FEATURES/アフロ)

2000人以上を拉致

 ボコ・ハラムとは現地語で「西洋の教育は罪」という意味だ。彼らを世界的に有名にしたのが、昨年4月の女子生徒の集団誘拐事件だ。ナイジェリアの北東部の町チボクの女子学生寮が組織の襲撃を受け、キリスト教徒の女子生徒276人が誘拐され、現在も約220人が行方不明のままだ。アムネスティ・インターナショナルによると、昨年以来少なくとも2000人を超える少女や女性が誘拐されている。

 誘拐事件は世界中から非難を呼び、ネット上を中心に「少女たちを取り戻せ」という運動が広がった。運動には、オバマ大統領のミシェル夫人も参加した。しかし少女らの大半は依然、行方不明のままだ。組織の指導者のアブバカル・シェカウは少女らをイスラム教に改宗させて戦闘員の妻にし、一部は売り飛ばした、とうそぶいた。シェカウの言う通り、なんとか脱出した少女らはレイプされ、ほとんどが妊娠していた。

 世界的な非難の高まりもあり、ナイジェリアと周辺のチャド、カメルーンなど5カ国が米国の支援を受け、1万人規模の連合軍を結成してこの春からボコ・ハラム掃討作戦を開始した。ボコ・ハラムは拠点にしていたナイジェリア北東部のボルノ州の一部から撃退されるなど大きな打撃を被ったが、その報復としてナイジェリアやカメルーンでテロ攻撃を激化させた。

 特に10代の少女を使った自爆テロを市場やモスクなどで連日のように実行している。実行者の一部には、女子学生寮から誘拐された少女らも含まれており、ジハード思想に洗脳された者もいるようだ。しかしほとんどは、命令に従わないと生き埋めにするなどと脅され、体を覆うイスラムの民族衣装ブルカの下に爆発物を体に取り付けられて現場に連れて行かれるという。

 少女らが現場付近に到達すると、ボコ・ハラムの工作員が携帯電話などを使った遠隔操作で爆弾を爆発させるやり方が多い。自爆の名を借りた殺人とも言えるだろう。国連児童基金(ユニセフ)などによると、ナイジェリアの自爆テロは昨年26件だったのに対し、今年はこれまでにすでに約40件にも上る。うち4分の3は少女や女性が実行者だ。テロの犠牲者は5月下旬以降だけで約550人にも及ぶ。

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佐々木伸(ささき・しん)

星槎大学客員教授

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