高速無料化は愚策

ニセ民営化を見直せ


宮川公男(みやかわ・ただお)
財団法人統計研究会会長。1931年生まれ。一橋大学教授・麗澤大学教授を経て本年より現職。著者に『基本統計学』(有斐閣)、『政策科学の基礎』(東洋経済新報社)など多数。

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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去る3月の千葉県知事選挙に立候補した森田健作氏は、3000円だったアクアライン通行料金を800円にすることを選挙公約の一つに掲げて当選し、その公約が8月1日に実現した。全くの驚きだ。また8月30日の衆議院総選挙でも、高速道路料金は政権争いのための国民の人気取り政策の対象になった。民主党はマニフェストに「高速道路の原則無料化」をはっきりと掲げ、対抗する自民党も「高速道路の利便性向上」のための「料金政策」を行うとし、麻生内閣で割引き「1000円ポッキリ」を実施している。ともに十分な思慮を欠いた愚策だ。

 さしあたり民主党は段階的無料化、自民党は割引き政策という違いはあるが、両党とも高速道路も一般道路と同じ道路として基本的には無料であるべきだという立場に立っていることは同じである。そしてそもそも高速料金とは何か、また高速道路は無料であるべきかという根本問題について全く考えていない。

 私は20年以上も前から、高速道路料金は鉄道における特急料金と同じ性質のものであるとして、高速道路無料化に反対し永久(無期限)有料論を唱えてきた。私がここで強調したいことは、問題は有料であるということではなく、高すぎる有料であるということである。そこで以下鉄道の場合と比較しながら高速料金とは何か、なぜ高すぎるのかについて考えてみよう。

 鉄道であれ道路であれ、交通・運輸による人あるいは物の移動によって実現されるものは、場所的移動の効用と時間的移動の効用である。鉄道も道路も、人や物を出発地から目的地へと異なる場所の間を移動させるために利用される。そしてそこで重要なのは移動に要する時間である。

 このような観点から鉄道と道路の料金を表1のように整理して比較することができる。まず、基本的に場所的移動の効用を提供するものが、鉄道の場合の普通列車、道路の場合には一般道路である。そしてその対価は、鉄道では普通運賃で、それは乗車券の購入によって支払われるが、道路の場合には無料である。これに対して、場所的移動に追加的に「高速での」移動という効用を提供するものが、鉄道の場合の特急列車、道路の場合の高速道路である。特急列車は車輌や座席が普通列車より快適であり、高速道路は路面舗装がよく(高機能舗装)、信号がないため走りやすいといった高速性以外のメリットもあるが、それも含め、鉄道の特急料金、道路の高速料金は、基本的には普通列車、一般道路に比べての「高速での」移動の効用に対して支払われる対価である。

 ここで重要なことは特急料金や高速料金は「追加的」料金であるということである。それは、普通列車や一般道路よりも高速の移動を選好する人の自由な支払い意思(willingness-to-pay)によって支払われるものである。いいかえると、高速料金は高速移動の効用を得る人の自由意思にもとづく受益者負担である。

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