WEDGE REPORT

2015年11月24日

»著者プロフィール

 パリの同時多発テロ再発の懸念が高まるベルギーで都市機能がマヒする中、同事件を指揮した過激派組織「イスラム国」(IS)の黒幕の存在が次第に浮上してきた。ISの最高意思決定機関「諮問評議会」のメンバーにして、組織の公式スポークスマンであるアブムハマド・アドナニ(38)がその男だ。

ニューヨークタイムズスクエアでISへの抗議デモを行うムスリムたち(Getty Images)

バグダディの右腕

 アドナニはシリア人で、ISの対外作戦の責任者。組織の指導者、アブバクル・バグダディの右腕的な存在で、最高幹部の1人として影響力を発揮している人物だ。パリの同時爆破テロは無論のこと、事件の前に発生したトルコ・アンカラの大規模自爆テロ、エジプトのロシア旅客機爆破、ベイルートの爆弾テロなど一連の対外作戦を計画、監督したと見られている。

 米ニューヨーク・タイムズによると、元米テロ対策センター長のマシュー・オルセン氏は「アドナニはISが台頭した1年前から対外作戦を取り仕切ってきた」と指摘している。アドナニは重要な節目では、公式スポークスマンとしてメッセージを発信するが、写真は暗殺を恐れて公表されていない。米政府が最近行った暗殺作戦を辛うじて逃れたとも伝えられている。米政府は500万ドルの賞金をその首にかけている。

 アドナニの名を知らしめたのは、昨年9月22日、米主導の有志連合がシリアのIS拠点に対する空爆に踏み切った時だ。アドナニはこの空爆後、「有志国連合の市民を殺害せよ」という指令を出し、注目されるようになった。この指令でアドナニは特に「薄汚れたフランス人」と名指しし、どんな手段でもためらうことなしに殺せ、と呼び掛けた。

 ちなみに専門家によると、ISのこの2年間の声明で、攻撃する、と最も多く名指しされたのはロシアで25回以上の脅しを受けた。次いでフランスの約20回が続く、という。ISの攻撃を主導している米国がトップではないのは、敵とするかつての十字軍には新興勢力の米国が歴史的に含まれないことが理由のようだ。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る