WEDGE REPORT

2015年12月27日

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澤 昭裕 (さわ・あきひろ)

国際環境経済研究所所長

1957年、大阪府生まれ。1981年一橋大学経済学部卒業後、通商産業省(現在の経済産業省)入省。東京大学先端科学技術研究センター教授等を経て現職。21世紀政策研究所研究主幹も務める。

  東京電力福島第一原子力発電所の事故から5年が経とうとしている。
  パニックが収まっていない中で次々と決定されたこれまでの政策措置は、当面5年程度を念頭に置いていたという。5年経てば、事故の収束や放射能汚染、避難状況等について、事態を冷静に分析できる状況になっているだろうから、その時点で再検討を加えると考えていたわけだ。
  2016年は、17年3月の避難指示解除以降の政策のあり方について、抜本的な検討を行う極めて重要なタイミングである。
  事故直後の政治的判断がつくり出したタブーや囚われた固定観念を、意図的に表に晒して議論することが必要だ。

前篇「除染のやり過ぎを改める」についてはこちら

放射線リスクの情報発信

 種々の主体が行っている放射線に関するモニタリングの結果、データは相当厚く整備されており、福島の地元ではデータをどう理解すればよいのかについての知識も広がっている。

 特に子どもの健康を守るためには、放射線そのもののみならず、放射線に対する不安に起因する健康への悪影響をどう防ぐかという視点も重要だ。長期的に対応しなくてはならないことを考えれば、正しい情報の提供を行い、「正しく恐れる」知識や知恵を住民に身につけてもらうことが肝要である。

 また、未来のある子ども達の心のケアに最大の努力を注力すべきだ。チェルノブイリの経験からの最大の教訓はここにある。政府はこうした教訓も踏まえて、放射線の健康リスクに関する国際的な見解を提示しており、これを踏まえた住民一人ひとりの柔軟な対応を可能とするべく、住民への線量計の配付・計測や、相談員の巡回等によるきめ細かな対応を行っている。

 むしろ問題は、現地よりも福島県外の人々の放射線リスクに関する知識や情報レベルにある。いまだに福島県は「住める場所ではない」とか「逃げるべきだ」などと煽りを繰り返している「市民運動団体」が存在している。福島を救うような顔をしながら、実際には復興を妨げ、地元住民の心の傷に塩を塗りこむような活動を行っている勢力に屈することがあってはならない。これは原子力推進か反対かとは別次元であり、人間としての品格(integrity)の問題として捉えられなければならない。

福島・浜通り地区で開催された国道6号の清掃ボランティア活動に対し、「高線量で危険」と東京から駆けつけた活動家たち(Wedge)

 つい最近も、福島の国道6号線で行なわれた清掃ボランティア活動のイベントで、そうした団体が主催者に対し激しい抗議活動を行い、あろうことかそれを好意的に報じるメディアがあったことをWedge12月号が報じている。福島出身の社会学者、開沼博氏は、この問題を取り上げて、次のように書いている(2015年11月2日福島民友への寄稿)。

「無理解と『福島=絶対危険という価値観以外認めない』というイデオロギーが背景に存在する。(中略)先鋭化する市民運動がなす誹謗中傷が直接的に、あるいはインターネットを介して被災者に向けられるのは、今回にとどまらない。農家など食べ物に関わる生業につく住民に『毒を作るな、売るな』と、避難から帰還した母親や県内の教育関係者に『子どもを傷つけるのか』『洗脳されている』といった言葉が向かう」

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