2024年12月22日(日)

桐生知憲の第四社会面

2016年1月29日

 甘利明・経済再生担当大臣が週刊文春で報じられた現金授受の疑惑を受けて辞任した。この会見の中で、甘利氏は「閣僚としての責務及び政治家しての矜持に鑑み」て大臣を辞任すると述べた。1月21日に疑惑が報じられて以降、甘利氏は現金授受について「記憶があいまい」などと発言していた。秘書が受け取っていたかどうかも含めて調査をするとしていたが、1週間で現金の受け取りを認めた。

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 甘利氏は50万円を2回にわたり受け取っていたが、50万円を「記憶にない」とし、ごく当たり前のこととして簡単に受け取るだろうか。甘利氏は安倍晋三総理の最側近の1人で、アベノミクスを支える重要閣僚だった。

 今回は、週刊文春のスクープで大臣を辞任したと表現してもいいだろう。週刊文春によると、甘利氏は2013年11月14日、大臣室で千葉県の建設会社から50万円の現金を受け取り、さらに14年2月1日には地元の神奈川県大和市にある自身の事務所で同じく50万円の現金を受け取った。甘利氏はこれらの現金の授受を28日の会見で認めた。

 さらに会見では、13年8月20日に地元事務所で秘書がこの建設会社の総務担当者から500万円を受け取ったことを認めた上で、このうちの100万円を甘利氏の支部に寄付として、もう100万円を甘利氏の秘書だった神奈川県議会の自民党支部への寄付としてそれぞれ処理したものの、残りの300万円は地元事務所長を務める秘書が「自腹でしなければならない支出支払いなどに使った」と説明した。

 建設会社総務担当者からの一連のカネは、この建設会社が千葉県内の再開発事業をめぐり独立行政法人都市再生機構(UR)と補償交渉でトラブルになり、甘利事務所に“口利き”を依頼したためだったと週刊文春に実名告発した総務担当者は語っている。

 甘利大臣はこうした事態を受けて、「国会議員としての秘書の監督責任、閣僚としての責務および政治家としての矜持に鑑み、本日ここに閣僚の職を辞することを決断した」とし、経済再生担当大臣を辞任した。会見を聞いている限り、辞任の理由は信頼する地元事務所長ら秘書に対する監督責任という意味合いが強いと感じられた。300万円を政治資金収支報告書に記載していないので、これは虚偽記載の政治資金規正法違反にあたる可能性が高く、300万円を秘書が私的に流用していたのならば業務上横領罪に該当する可能性がある。

 最も関心を集めている報酬を受けてのURなどへの口利きが真実であるならば、政治家や秘書の公務員への口利きを禁じるあっせん利得処罰法違反となる。捜査当局は重大な関心を持って、事態の推移を見ているはずだ。

 週刊文春の報道後、安倍総理をはじめとする官邸は甘利氏の大臣慰留に努めたとされる。甘利氏が調査を約束したこともあり、疑惑の段階で大臣辞任とはいかなったようだ。一方で、この間「嵌められた」キャンペーンも展開された。自民党の高村正彦副総裁が「録音されていたり、写真を撮られていたり、罠を仕掛けられた感がある。周到なストーリーが作られている」と発言するなど、自民党を中心に甘利氏を擁護する声が頻繁に聞かれた。ある政府関係者が「国のために最も働いている甘利大臣を貶めようとすることは許せない」と息巻いているところを筆者も目撃した。

 確かに告発した建設会社の総務担当者は暴力団との交際や右翼団体との関わりが噂されている。仮に“まっとうな”人間でなかったとして、さらに罠にかけられたとして、そういう人物と交際することや、罠にかかってカネを受け取るほうがさらに問題ではないだろうか。


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