カープに〝マエケンロス〟は起こっていないか?


赤坂英一 (あかさか・えいいち)  スポーツライター

1963年、広島県生まれ。86年に法政大学文学部卒業後、日刊現代に入社。88年より、スポーツ編集部でプロ野球取材を担当。同社勤務のかたわら週刊誌、月刊誌で、スポーツを中心に人物ノンフィクションを多数執筆してきた。主な著書に『失われた甲子園記憶をなくしたエースと1989年の球児たち』(講談社)『プロ野球「第二の人生」 輝きは一瞬、栄光の時間は瞬く間に過ぎ去っていった』(講談社)『最後のクジラ――大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生』(講談社)『広島カープ論』(PHP研究所)など。

赤坂英一の野球丸

ジャーナリスト赤坂英一による野球日記。現場目線で、野球の今を深読みしていく。

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カープに〝マエケンロス〟現象は起こっていないか。今年の日南キャンプを取材するに当たって、一番気になっていたのがこれだ。

広島のキャンプ地、日南天福球場

 昨季15勝8敗で最多勝のタイトルを獲得した絶対のエース・前田健太の穴はとてつもなく大きい。緒方監督も相当危機感を募らせているようで、昨秋のキャンプでは連日3回程度の紅白戦を行っては九里亜蓮(昨季0勝1敗1ホールド)、薮田和樹(同1勝2敗)を登板させて状態をチェック。この春のキャンプも4日目から野村祐輔(同5勝8敗)、戸田隆矢(同3勝3敗5ホールド)らに打撃投手をさせたのをはじめ、シート打撃のような実戦練習で中堅や若手を次から次にテストしている。少しでもいいから前田の穴を埋められる、というよりちょっとでも穴を小さくできる投手に出てきてほしい、という指揮官の本音がヒシヒシと伝わってくるようだ。

 あるチーム関係者は、若手投手陣が精神的な〝マエケンロス〟に陥りはしないかと心配している。「野村祐輔、大瀬良大地、一岡竜司らはマエケンに心酔しとったろう。マエケンに右へ倣え、マエケンについていきさえすりゃ間違いないという姿勢でずっとやってきた。そういう精神的支柱がおらんようになったんじゃけえね。さぞ不安に感じとる者もおると思う」というのだ。いや、マエケンがいなくなったいまこそ、自分がエースにのし上がるチャンスだ、そう考えている投手はいないのかと聞いたら、「福井優也ならそう思うとるはず。プロなんやからもっとそういう投手がおってもええんじゃが」とのことである。

投げ込み派のOBをカリカリさせる

 そんな〝今時の若い投手〟を一人前にするため、昔気質のカープOBの間からは「投げ込みを復活させて鍛え直したほうがええ」という声も聞かれる。カープは伝統的に、大野豊、北別府学、川口和久、佐々岡真司、黒田博樹など、投げ込みを重ねてエース格に成長した投手が多い。ところが、マエケンは「肩や肘は消耗品。投げ込みをやってもいいことは一つもない」と主張。若い投手たちもこれに追従し、昔ながらの投げ込み派の指導者やOBをカリカリさせてきた歴史がある。

 今春のキャンプでは、「本当に投げ込みは300球以上から」が持論のOB安仁屋宗八氏が臨時投手コーチとして参加する。さすがにいきなり400球も500球も投げさせはしないだろうが、練習量が格段に増えることだけは確実だ。そうなったら、今度はケガ人が続出したりしないか、という別の懸念も生じる。

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赤坂英一(あかさか・えいいち)

スポーツライター

1963年、広島県生まれ。86年に法政大学文学部卒業後、日刊現代に入社。88年より、スポーツ編集部でプロ野球取材を担当。同社勤務のかたわら週刊誌、月刊誌で、スポーツを中心に人物ノンフィクションを多数執筆してきた。主な著書に『失われた甲子園記憶をなくしたエースと1989年の球児たち』(講談社)『プロ野球「第二の人生」 輝きは一瞬、栄光の時間は瞬く間に過ぎ去っていった』(講談社)『最後のクジラ――大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生』(講談社)『広島カープ論』(PHP研究所)など。

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