WEDGE REPORT

2016年2月8日

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 オバマ米政権は過激派組織「イスラム国」(IS)の勢力が北アフリカのリビアで急速に拡大していることを懸念、本格的な軍事作戦の検討に入った。米軍はアフガニスタンでもIS攻撃を激化させており、組織の本部のあるシリアとイラクを超えて対外的に拡大するISとの新たな戦線が生まれようとしている。

最大6500人の戦闘員

 リビアは2014年6月以降、トリポリのイスラム主義者政権と北東部トブルクの世俗政権とに分裂、混乱が広がっている。ISはこの混乱に乗じて両都市の間の地中海沿岸シルトを中心に急速に勢力を拡大した。昨年には200人ほどの戦闘員だったのが、米欧の予想をはるかに上回り、現在は「最大6500人」(米情報当局者)にまで膨れ上がった。 

リビアの首都トリポリ(iStock)

 シルトではISの本部のあるシリアのラッカ同様、シャリア(イスラム法)に基づいた法令が布告され、住民らは厳しい生活を強いられている。リビアには3つのIS分派ができているが、各地の他の分派と違ってシリアのIS本部の直轄組織、いわば“天領”だ。

 ISはシリアとイラクで仮に壊滅させられたとしても、イスラム原理主義国家「カリフの府」を存続できるよう、リビアに第2の拠点を築くべく勢力の拡大を図っているとされる。このためISは本部から5、6人の幹部をリビアに派遣し、組織固めを急いでおり、外国人戦闘員にもリビアに集まるようネットで呼び掛けを行っている。

 米国と欧州諸国、とりわけリビアから地中海を隔てた対岸に位置するイタリアはこうしたISの急成長に懸念を深め、2月2日にもローマで緊急閣僚級会議を開催、ケリー米国務長官らが中心となって対応を協議した。検討されている対応策には、イタリア軍を中核とする欧州諸国部隊をリビアに派遣し、ISと対抗する地元の民兵軍団を組織、訓練する案などが含まれている。

 「軍事的選択肢も検討中」(国防総省報道官)としてきた米国も先週、オバマ大統領の下で国家安全保障会議を開催。米紙などによると、複数の補佐官がISの拠点に対する空爆など軍事介入の承認を大統領に求めた。新たな戦線拡大に慎重な大統領はリビアの分裂した政府を統一する外交的な取り組み強化を指示したものの、軍事的なオプションを立案するよう要求した。

 米国は英国とともにリビアのISに対する秘密偵察飛行を続けており、昨年11月にはシリアから派遣されたイラク人のIS幹部アブ・ナビルをリビア東部で空爆により暗殺した。米欧がここにきて軍事介入に傾斜しているのは、ISがシリアで伸張したのを見過ごし、今日の強大な組織になるのを許したという反省から、リビアで同じ轍は踏みたくないと考えているからだ。

 とりわけ米欧はISが戦闘員をリビアから地中海を経由してイタリアなどに送り込み、テロを起こすのではないかと警戒している。欧州各国は海を渡ってくる不審な船舶の監視についてはほとんど対応できていないのが実態。この他、ISが原油埋蔵量世界10位のリビアの油田を狙っていることも次第に明らかになっており、これも大きな懸念材料だ。

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