イランに経済復興ブーム
漁夫の利を得る強硬派


佐々木伸 (ささき・しん)  星槎大学客員教授

共同通信社客員論説委員。ベイルートやカイロ支局長を経て外信部副部長、ニュースセンター長、編集局長などを歴任。

WEDGE REPORT

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核合意によりイランの経済制裁が解除され、8000万人の市場を狙って欧州や中国の企業などが殺到、同国に経済復興ブームが起きている。制裁に苦しんできた国民の期待も大きいが、制裁解除の効果が末端まで及ぶには数年かかるとされ、漁夫の利を得るのは結局、実権を握る革命防衛隊など保守・強硬派だとの見方も強まっている。

まずは1000億ドル

テヘラン市内(iStock)

 制裁解除を見越した各国のイラン詣では昨年から始まり、特にフランス、英国、ドイツなど欧州各国当局者や企業の代表らが続々イラン入り、今年に入ってイラン詣ではさらに加速した。例えば、制裁が解除された1月16日前後にはドイツのシュレーダー元首相やチェコの貿易相などもテヘランに滞在していた。

 イラン政府は原油の生産を日量50万バレル増やすことを決定し、凍結されていた海外預金のうち1000億ドル(10兆円)が自由に使えるようになったことも発表した。銀行9行が国際送金ネットワークに復帰し、貿易の決済ができるようになった。これに伴い使用できなかったクレジット・カードも利用可能になる見通しだ。

 制裁解除の立役者である改革派のロウハニ大統領は先月末、イタリア、フランスを相次いで訪問し、両国との間で5兆円を超える巨額の商契約や企業の業務提携などに合意、経済制裁が解除されて自由の身になったイランをこれ見よがしに誇示した。大統領は政治面でも、過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いや欧州に殺到する難民問題などについて、オランド仏大統領らと突っ込んだ協議を行った。

 巨額契約の中には、ジェット旅客機エアバス118機の購入(250億ドル)や自動車メーカーの仏プジョー・シトロエン社との合弁会社の設立も含まれているほか、フランスの総合エネルギー企業「トタル」や大手銀行などもイランとの取引拡大を模索している。

 ロシアも武器や防衛システム、原子炉建設などをイランに売りこむことに躍起になっており、トルコとの関係悪化で輸入ができなくなった農産物や食肉をイラン産に切り換えたり、観光ビザの撤廃を検討中とされる。

 イラン・ビジネスを狙っているのは欧州だけではない。中国や韓国も多数の企業がテヘランに入っている。中国の習近平国家主席自ら1月にはイランを訪問してロウハニ大統領と会談、中国がイラン国内で高速鉄道を整備することで合意した。習主席は最高指導者のハメネイ師とも会談した。

 これに対して日本企業は出遅れ気味だが、商社やメーカー、プラント企業などがイラン当局者や企業幹部との接触を図っている。弾道ミサイル発射実験で新たな制裁を発動した米国の企業もイランとの取引には慎重だ。

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