2024年12月27日(金)

特別企画 海外はオバマ訪日をどう見ているか

2009年11月16日

 著者エドワード・J・リンカーン氏はニューヨーク大学ビジネススクール「スターン校」経済学教授、日米ビジネス経済研究センターのディレクター。長年日米経済関係を観察し、時に実務にも携わったベテラン研究者である。
ワシントンの有力リベラル系シンクタンク、ブルッキングズ研究所で唯一の日本専門家として2000年代半ばまで長く務め、在ワシントン日系メディアで同氏を知らない人はいなかった。
1990年代半ば、クリントン政権期には在日米国大使館に赴任、当時のウォルター・モンデール大使(カーター政権期の副大統領)に特別顧問として仕えた経験をもつ。日米関係についての著書多数。彼に、今回のオバマ訪日はどう映るのか? 
(本記事は、'Thoughts on President Obama's Trip to Japan'の翻訳版です)

  1960年代から1990年代半ばにかけて、日米安保関係を専門とする米国人はたびたび、我々のように日米の経済問題に取り組む政府関係者を非難した。経済・貿易問題では米国が日本政府に圧力をかけることがよくあり、時に緊張が生じたり、日本メディアに批判されたりした。安保の専門家たちは、そうした圧力と緊張が日米関係の要である安保関係にまで波及するのだと主張した。

 この長い歴史を考えると、今起きていることは実に皮肉だと思わざるを得ない。何しろ今、日本政府に圧力をかけ、日米関係の他の重要な側面に波及しかねない緊張を引き起こしているのは、ほかならぬ安保関係の専門家なのだから。

 皮肉かどうかはさておき、米国国防総省と鳩山政権の間に生じている最近の緊張は、首脳会談の役割がいかに重要かを示している。バラク・オバマ大統領が今回の訪日で果たすべき最大の仕事は、米軍普天間基地を巡る緊張が日米関係全体を損なうことはないと鳩山由紀夫首相に保証することだった。

 首脳会談の議題はもっと広範に及び、世界経済の回復を持続させる方法や気候変動に関する政策、北朝鮮問題、中国との付き合い方など、重要な懸案事項が多々あった。こうした議題について、日米政府は異なる見解を抱いているかもしれないが、両国の協調は重要である。安保関係の詳細を巡る対立に根差す漠然とした態度の悪化のせいで協調が危うくなるようであれば、嘆かわしいことだ。

 また、日米関係が今のような局面に至ったことも皮肉である。というのも極めて単純な意味で、日米双方は今、中道よりやや左寄りの政権をいただいているからだ。ちょうど保守寄りの小泉政権が保守派のブッシュ政権と良い関係にあったように、オバマ、鳩山両政権も多くの共通点を見いだすのが自然だろう。

 では、なぜ日米関係は突如悪化したように見えるのか。筆者は、国防総省と、米軍の日本駐留の長い歴史の中にその答えがあると考えている。


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