「3年程度の返済猶予を実施したい」。亀井静香金融担当大臣が就任早々にぶち上げた「モラトリアム構想」は、銀行業界を中心に反発も見られたが、結局、無難なところに落ち着きそうだ。それにしても“中小企業の味方”を強烈に印象付けた亀井大臣の抜群の政治的センスには、ただ脱帽するばかり。
亀井サンタの贈り物に浮かれていられない
その中小企業金融円滑化法案だが、中小企業から申し出があれば、金融機関はできる限り、返済猶予など貸し付け条件の変更に対応するよう、努力義務が課された。「これまで金融機関の担当者にとって、リスケ(※債務者が返済計画通りに返済できない場合、返済額の減少や猶予期間の導入など返済条件を変更すること)を行うことは、自身のコンサルティングが機能しなかったとして減点評価に繋がるため、嫌々ながら応じてきた経緯がある。そのため金融機関にリスケなどの実績を情報公開するよう義務付けた意味は大きい」と山口義行・立教大学経済学部教授が指摘するように、危機的な経済状況に適した、あるべき中小企業支援の姿に一歩近づいたと言えるだろう。
こうしたなか、亀井法案を中小企業の経営者はどう受け止めているのだろう。情報公開の効果が定かではないため、「銀行が財布の紐をしめたら元も子もない」と一線を引く人もいれば、「良くないことかもしれませんが、ありがたい」と声を潜める人もいる。こうした反応の違いは、企業体力の差によるところが大きい。ただ総じて言えることは、現時点では、経営者に警戒感や後ろめたさがあり、諸手を挙げて喜んでいる状況ではないということだ。
資金繰りに一安心した経営者も、大きな課題は残ったままだ。本業で売り上げが立たないことには、今回の金融支援も単なる延命措置に終わってしまう。
政策と企業のつなぎ役が重要
「中小企業の自立」が叫ばれて久しい。1980年代以降、集団化や系列化の崩壊、グローバル化、低成長といった時代の変遷の中で、大企業と中小企業の密接な関係に亀裂が入りだした。大企業依存体質では、先行きが危ういことは、経営者はもちろん、行政も早くから気づいていた。99年には中小企業基本法が36年ぶりに抜本改正され、それまでの「中小企業=弱者」という前提に立った大企業と中小企業との格差是正の方針を改め、経営革新や創業支援など、やる気のある企業を重点的に支援する方向に舵を切った。支援の方向性にも誤りはなかったはずだ。
しかし、昨年のリーマンショックを契機として世界的に需要が急減し、製造業をはじめとする大企業は生産体制の抜本的な見直しを迫られている。事実、今年に入り某自動車メーカーでは、これまで国内企業に発注してきた金型を海外に切り替えたり、自社が認定した下請け・孫請け企業にしか発注してこなかった総合電機メーカーがその制約を外したりしているように、大手メーカーも必死になってコストカットを進めている。
大企業からの注文を堅実にこなすことを求められてきた中小企業の多くは、自ら仕事を獲得するという営業センスを求められることを痛感しているのだ。この状況下で、世界一メニューが豊富であるとも言われている日本の中小企業支援は、企業をサポートできているだろうか。