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2016年3月19日

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木下斉 (きのした ひとし)

一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事

1982年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。経営を軸に置いた中心市街地活性化が専門。内閣官房地域活性化伝道師等も務める。近書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK出版新書)。

 「ふるさと納税」の人気が沸騰している。2015年度上半期の実績は454億円と、前年同期の3.9倍にも及ぶ。下半期は駆け込み需要があるため、さらに伸びると予想されている。

ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」

 元来、都市部に住む人が、都市部にいながらふるさとに納税をするという、地方応援のための税制優遇策に過ぎなかったこの制度の人気に火をつけたのは返礼品という「お返し」だ。この2年ほどで「住民税・所得税で税制控除も受けられ、さらに地方の特産品をもらえてお得」というイメージが広まった。しかしその裏側では、ふるさと納税を獲得するために、地方自治体間で激しい高額返礼品競争が発生。1000万円の寄付に750万円の宅地を贈ろうとする自治体が現れるなど、税制としての本質からかけ離れた実情に、総務省が警告を出すに至った。

 現状を放置すれば、地方は活性化するどころか、産業競争力も財政も悪化する危険性がある。都市部の側も、高額納税者ほど得をする上に、自治体の歳入が減少するという公平性に欠く状況が生まれている。

 地方にふるさと納税が行われると、自治体はその何割かを使って返礼品として指定していた地元産品を地元企業・生産者から買い取る。

 当然これは、地方産品の市場取引が拡大しているわけではない。税制を活用した、自治体による買い取りに過ぎない。生産者に売り上げは立つが、納税者はほぼタダだから喜んでいるだけだ。消費者が直接対価を支払わないため、既存顧客に対するブランド価値を棄損することにつながる。

 従来、補助金を使って、地方産品をタダ同然で配布するイベントをいくら東京で開催しても、地方の産品の流通量は特に拡大しなかった。タダでもらえるものはタダで貰えるもの。対価を支払って欲しいものとは全く異なる。

 地方産品を通じて地域活性化を図るのであれば、妥当な価格で営業をし、販売を積み上げなくてはいけない。ふるさと納税で買い上げてもらうのではなく、真っ当な市場取引を通じて商品流通を行わなければならない。

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