金融万事 塞翁が馬

2016年4月27日

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渡邊竜士 (わたなべ りゅうし)

トムソン・ロイター・マーケッツ株式会社 執行役員

トムソン・ロイター・マーケッツ株式会社 執行役員。1972年東京生まれ、米国育ち。 慶應義塾大学 総合政策学部卒業、野村證券株式会社入社。国内外の機関投資家向け営業を経て、マネージング・ディレクター就任。セールストレーディングやヘッジファンド向けビジネスの責任者に。香港でアジア戦略に携わった後、2014年1月退社。2014年6月トムソン・ロイター入社。

盛り上がる世界のベンチャー市場

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 意欲と志は充分にあるが資金とビジネス経験が無い起業家(ベンチャー企業)に投資をし、創業初期段階での成長をサポートする ’ベンチャー投資’ が世界で注目を浴びている。世界全体におけるベンチャー投資額は年々増加傾向にあり、昨年は1102億ドル(約13.2兆円)で、ITバブルピーク(2000年)の1366億ドル(約15兆円)へ迫っている。

 ベンチャー起業(誤植ではなく、あえて’起業’)に環境が整っている都市として、世界ベンチャー投資の約6割(666億ドル、または約8兆円;2015年)を占める米国のシリコンバレー、ニューヨーク、ロサンゼルス、ボストン、シカゴ、シアトルの他、テルアビブ、ロンドン、ベルリン、シンガポール、パリ、サンパウロ、そしてバンガロール等も注目を浴びている。

 一方、昨年の日本におけるVC投資額は5.78億ドル(約693億円・トムソン・ロイター集計)で、2002~2013年頃よりは2~4倍になっているものの、ITバブルピーク時の20.5億ドル(約2257億円)の約3割水準でしかない。その規模は世界第3位のGDPやODA(政府開発援助)支出が150~200億ドル/年の国としては異質だ。中国におけるVC投資額385億ドルと比較しても差は明白だ。

 一億総中流社会を目指して傾斜生産方式や所得倍増計画を掲げ、高度成長期やバブル経済を味わった日本文化にとって、創意工夫とリスクへの挑戦(=起業)が浸透するには時間が必要だ。ずいぶんと前から官公庁や業界団体があの手この手で起業・ベンチャー企業の育成に力を入れているが、世界水準とのギャップは大きい。

エコシステムの創造・整備・拡大に向けて

 このコラムで紹介してきたフィンテック(金融とIT技術の融合)企業も多くがベンチャーだ。日本で急速に高まったフィンテックへの関心は、前述の(ベンチャー業界の世界水準との成熟度)ギャップを埋める良い機会ともいえる。

 鶏が先か卵が先か? そんな悠長なことではなく、ベンチャー企業を取り巻く全方位的な「エコシステム」(生態系連鎖・循環、事業連携協業等)の創造・整備・拡大が必要なのだ。フィンテックの場合、規制監督業種である金融業との関わり合い、大手伝統的金融機関との連携、等の理由から特に「エコシステム」形成の必要性が急務だ。

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